日本でテニスを楽しむなら、避けては通れないのが「オムニコート」です。砂入り人工芝とも呼ばれるこのサーフェスは、日本独自の進化を遂げたと言っても過言ではありません。しかし、初めてこのコートに立つ人や、ハードコートから転向した人にとっては、「なぜこんなに滑るの?」「靴は何を選べばいい?」と戸惑うことも多いはずです。
今回は、数え切れないほどの週末をオムニコートで過ごしてきた私の経験をもとに、技術的な特徴から、絶対に失敗しないためのコツ、そして誰もが一度は直面する「砂対策」まで、徹底的に解説します。
1. そもそもオムニコートとは?なぜ日本に多いのか
オムニコートは、人工芝の隙間に細かい珪砂(砂)を敷き詰めたコートです。最大の特徴は、驚異的な「水はけの良さ」にあります。
ハードコートやクレーコートなら数時間はプレーできないような大雨の後でも、オムニコートなら雨が上がって15分もすれば試合を再開できることが珍しくありません。この「全天候型」という性質が、雨の多い日本で爆発的に普及した最大の理由です。また、足腰への衝撃が少なく、ジュニアからシニアまで長時間プレーしても疲れにくいというメリットもあります。
2. 実体験から語る「オムニコート」特有の感覚
実際にプレーしてみると、他のサーフェスとは全く異なる「独特のクセ」があることに気づきます。
スライディングは必須スキル
ハードコートではピタッと止まるフットワークが求められますが、オムニコートでは「滑りながら打つ」技術が重要です。ボールに追いつく際、最後の数歩をスライドさせることで、膝への負担を減らしつつ、次の動作へスムーズに移ることができます。ただし、砂の量によって滑りやすさが劇的に変わるため、試合前のアップでは必ず「今日の砂の乗り具合」を足裏で確認するのが鉄則です。
弾まない、滑るバウンド
クレーコートのようにボールが跳ね上がることは少なく、どちらかと言えばバウンド後の弾みが低く、滑ってくるような感覚があります。特にスライスショットを打たれると、ボールが地面を這うように沈んでくるため、腰をしっかり落として構える必要があります。
夏場の「照り返し」には要注意
人工芝は熱を持ちやすいため、真夏の昼間は足元から猛烈な熱気が上がってきます。ソールを通じて足の裏が熱くなることも多いため、休憩中は日陰で足を休めるなど、ハードコート以上に熱中症対策が必要です。
3. 失敗しないための「シューズ選び」とアイテム
オムニコートで最も重要なのは「シューズ」です。ここを妥協すると、パフォーマンスが落ちるだけでなく、最悪の場合、転倒して大怪我をします。
絶対に「オムニ・クレー専用」を選ぶこと
初心者がやりがちな失敗が、オールコート用シューズでオムニコートに立つことです。オールコート用はソールが比較的平らなため、砂の上ではグリップが効かず、氷の上を歩くように滑ってしまいます。必ず、ソールの溝が深く、突起(パターン)がはっきりしているオムニ・クレー専用モデルを選んでください。
信頼性の高いメーカーとして、日本人の足型に合ったアシックス テニスシューズや、クッション性に優れたヨネックス テニスシューズが定番です。特にアシックス ゲルレゾリューションシリーズは、横方向への激しい動きでも安定感が抜群で、多くのトップアマチュアに愛用されています。
メンテナンスの必需品
プレー後の「砂対策」も忘れてはいけません。オムニコートの砂は非常に細かく、靴の中、靴下、バッグの底、そして帰宅後の玄関まで侵入してきます。
4. オムニコートで勝つための小技
経験上、オムニコートでは「パワー」よりも「テクニックと我慢」が重要になります。
- 深いスライスで揺さぶる: 低く滑るバウンドは相手のミスを誘いやすいです。
- 砂のムラを見極める: ベースライン付近など、砂が薄くなって下の地が見えている場所は滑りません。逆にサイドライン付近は砂が溜まっていて滑りやすい。この「ムラ」を把握して動くのが上級者です。
- ボールの重さへの対応: 湿気を含んだオムニコートでのボールは重くなります。いつもより少し早めにテイクバックを完了させる意識が大切です。
まとめ
オムニコートは、正しく理解して準備を整えれば、非常に楽しく、体に優しいサーフェスです。まずは、自分の足を守るためのオムニコート用テニスシューズをしっかりと選び、砂の上で滑る感覚を楽しんでみてください。一度スライディングショットの快感を覚えると、他のコートには戻れなくなるかもしれません。


コメント