かつて、これほどまでにコート上で「華」と「気迫」を同時に放つ選手がいたでしょうか。車いすテニス界のレジェンド、国枝慎吾さんが引退した後、その大きな穴を埋めるどころか、新しい時代の扉をこじ開けたのが小田凱人選手です。
弱冠10代で世界ランキング1位に上り詰めた彼のプレーを実際に目にすると、テレビ画面越しでは決して伝わらない「重低音」のような迫力に圧倒されます。今回は、そんな小田選手の強さの背景、そして彼を支えるこだわりのギアについて、現場の熱量とともにお伝えします。
骨肉腫との闘い、そしてテニスとの運命的な出会い
小田選手の物語を語る上で欠かせないのが、9歳で発症した「左股関節の骨肉腫」という過酷な経験です。プロサッカー選手を目指していた少年が、突如として歩く自由を奪われる。その絶望は想像を絶するものだったはずです。
しかし、入院中にYouTubeで見た車いすテニスの動画が、彼の運命を180度変えました。「病気になったからこそ、今の自分がある」と言い切る彼の言葉には、単なるポジティブさを超えた、凄まじい覚悟が宿っています。現地で彼が放つ一球一球には、その葛藤を乗り越えた者だけが持つ、重みのある美しさが宿っています。
現地観戦で確信した「左腕」から放たれる規格外の威力
実際に試合会場に足を運んで最も驚かされたのは、打球音の違いです。乾いた高い音ではなく、空気を引き裂くような「ドンッ」という鈍い衝撃音。
特に注目すべきは、左利きから繰り出される鋭いサーブと、強烈なフォアハンドです。車いすを操る「チェアワーク」の速さも異常で、まるで体の一部のように車いすをスピンさせ、最短距離でボールに入ります。
「あ、これは届かない」と思ったボールに追いつき、カウンターでエースを奪う。そのたびに会場が揺れるような歓声に包まれる瞬間、私たちは「車いすテニス」という枠を超えた、純粋なアスリートの格闘を目の当たりにしているのだと実感させられます。
小田凱人の感性を支える「戦友」のようなギアたち
トップアスリートにとって、道具は体の一部。小田選手はヨネックスの製品を愛用しており、彼のプレースタイルを支える重要な要素となっています。
彼が手にしているラケットは、VCOREシリーズ。スピン性能が高く、攻撃的なテニスを展開する彼にとって、このラケット特有の「ボールを噛む感覚」は必要不可欠なのでしょう。また、激しいチェアワークを支えるフットウェアやウェアもヨネックス テニスウェアで統一されており、常に最高のパフォーマンスを発揮できるよう細部まで計算されています。
さらに、彼が使用する車いす自体も、ミリ単位の調整が施された「特注品」。それらを使いこなす技術とセンスがあるからこそ、あの芸術的なプレーが生まれるのです。
絶望の淵にいる誰かへ届ける「ヒーロー」の背中
小田選手はよく「病気をしたことは不幸ではない」と語ります。その言葉通り、コート上の彼は誰よりも輝いて見えます。
もし、今何かを諦めかけている人がいるなら、一度彼の試合をフルセットで見てほしいと思います。車いすを漕ぎ、泥臭くボールを追い、最後にはガッツポーズで吠えるその姿。そこにあるのは「可哀想な背景」ではなく、「圧倒的なヒーローの背中」です。
小田凱人という選手は、これからも車いすテニスの歴史を塗り替え続け、私たちに「可能性には限界がない」ことを証明し続けてくれるでしょう。彼の愛用するヨネックス テニスラケットが、次はどのグランドスラムの空に掲げられるのか、目が離せません。


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