テニスラケットの一本張りは時代遅れ?実際に10年試して分かった「究極の打球感」と意外な盲点

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テニスショップのガット張り受付で「一本張りでお願いします」と伝える人は、今やこだわり派のベテランか、ストリンギングの深淵に触れた一部の愛好家だけかもしれません。多くのメーカーが二本張りを推奨する中で、あえてテニスガットを一続きで通す「一本張り(1本張り)」には、データだけでは語れない、数値化不能な「心地よさ」が存在します。

今回は、ホームストリンガーとして数千本を張り上げ、自らも一本張りのラケットを振り続けてきた筆者の体験をもとに、その真実を余すことなくお伝えします。

一本張りと二本張り、何が決定的に違うのか?

まず、一本張りとは12メートルほどのテニスストリングを切断せず、メイン(縦糸)からクロス(横糸)まで一本の糸で仕上げる手法です。ノット(結び目)が2箇所で済むため、見た目が非常にスッキリします。

一方、現在の主流である二本張りは、縦と横でガットを切り分け、計4箇所の結び目を作ります。ヨネックスなどの主要メーカーがこちらを推奨するのは、フレームへの負荷が均等に分散され、変形のリスクが少ないためです。しかし、理屈を超えた「感覚の差」が一本張りにはあります。

体験して分かった「一本張り」の3つの快感

1. 振動が「マイルド」に整う感覚

二本張りに比べて、一本張りは打球時の振動が手に伝わるまでのノイズが少ないように感じます。結び目が少ない分、ストリング全体がひとつのユニットとして機能しているような一体感があります。バボラ ピュアドライブのような弾きの強いラケットに一本張りで通すと、ガツンと来る衝撃がわずかに「いなされ」、マイルドな打球感に変化するのが分かります。

2. スウィートスポットの広がり(錯覚かもしれないが重要)

これは多くのストリンガー仲間とも意見が一致するのですが、一本張りは「面全体でボールをホールドする」感覚が強まります。特にルキシロン アルパワーのような硬いポリエステルガットを使用した場合、二本張りだとカチッとした硬さが際立ちますが、一本張りだとしなやかさが顔を出します。

3. 「緩み」さえも味方にする独特のテンション維持

一本張りは構造上、縦糸と横糸が繋がっているため、打球の衝撃でテンションが微妙に再分配されます。これが「馴染み」を早くし、張り立てのツンツンした硬さが取れるのが早い。一度落ち着いた後の打球感は非常に長く安定するように感じます。

現実的なデメリットと向き合う

もちろん、良いことばかりではありません。筆者が経験した最大の失敗は、一本張りの「ボトムアップ(下から上へ張る)」によるフレーム変形です。

多くのラケットはトップ(頭)から張るように設計されていますが、単純な一本張りだと下から上へ向かって張ることになり、ラケットの肩の部分に大きな負荷がかかります。これを防ぐには「アラウンド・ザ・ワールド(ATW)」という特殊な通し方が必要ですが、これには高度な技術と手間がかかります。

また、ウィルソンのハイブリッドセットのように、最初から2種類のガットが同梱されている場合は、物理的に一本張りは不可能です。

結論:あなたが一本張りを選ぶべき理由

もしあなたが「ラケットとの対話」を重視し、硬質な打球感よりも「吸い付くようなホールド感」を求めているなら、一度は一本張りを試す価値があります。

最近のストリンギングマシンは精度が高いため、どちらで張っても性能差はわずかだという意見もあります。しかし、テニスはメンタルのスポーツです。「自分のラケットは一本の糸で完璧に繋がっている」という職人気質なこだわりが、ここ一番のショットで自信を与えてくれる――そんな体験こそが、一本張りの本当の価値なのかもしれません。

次回のガット張り替え時、ショップの店員さんに「一本張り(ATW指定)は可能ですか?」と尋ねてみてください。その一言が、あなたのテニスライフを一段深いものに変えてくれるはずです。

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