「なぜ、ラケットのグリップは丸ではなく、カチッとした8角形なのか?」
テニスやバドミントンを始めたばかりの頃、私はこの「角」の存在をただの滑り止め程度にしか考えていませんでした。しかし、中級者の壁にぶつかり、ショットの不安定さに悩んでいた時期にグリップの重要性を再認識し、8角形の構造を意識的に使い分けるようになってから、私のプレーは劇的に変わりました。
今回は、カタログスペックだけでは分からない「8角形グリップ」のリアルな使用感と、その恩恵を最大限に引き出す方法を、私の実体験を交えて深く掘り下げます。
握った瞬間に「面の向き」が指先に伝わる快感
円に近い形状のグリップと、エッジの立った8角形グリップの最大の違いは、視覚に頼らずとも「今、面がどこを向いているか」が脳に直結する感覚です。
私が愛用している バボラ ピュアドライブ や ヨネックス VCORE のような最新ラケットを握ると、手のひらの肉がグリップの「面」と「角」を正確に捉えます。特にボレーなどの一瞬の判断が求められる場面では、この「角」の感触が羅針盤になります。
以前、グリップテープを厚く巻きすぎて角が丸くなってしまったことがありました。その時、フラットサーブを打とうとして面が数ミリ狂い、ネットを直撃するミスを連発。たった数ミリの「角の消失」が、これほどまでに操作性を奪うのかと痛感した瞬間でした。
グリップチェンジは「回す」のではなく「角を乗り換える」
8角形である最大の功績は、グリップチェンジの速さと正確さにあると私は確信しています。
初心者の頃の私は、フォアハンドからバックハンドへ持ち替える際、ラケットを闇雲に回していました。しかし、8角形の各面に1番から8番までの番号がついていることを意識し始めてから、動作が洗練されました。
- コンチネンタル: 包丁を握るように、人差し指の付け根を2番の角に置く。
- セミウェスタン: 強く叩きつけるために、手のひらを4番の面に当てる。
この「角を乗り換える」感覚が身につくと、ブラインドテストでも完璧に持ち替えができるようになります。試合中の極限状態でも、指先に伝わる「カチッ」という角の感触が、フォームの迷いを消してくれるのです。
疲労を軽減し、握力を効率化する「角」の魔力
意外に思われるかもしれませんが、8角形は「疲れにくい」形状でもあります。
完全に丸い棒を握って振り回すには、遠心力に負けないよう常に全力で握りしめる必要があります。しかし、8角形には「角」があるため、そこに指を引っ掛けるだけで、少ない力でラケットを固定できます。
私が ウィルソン プロスタッフ を使ってハードな練習を行った際、後半になっても前腕の張りが少なかったのは、この形状のおかげで無駄な力(リキみ)が抜けていたからでしょう。インパクトの瞬間だけ力を入れ、それ以外は角に指を預けてリラックスする。この緩急こそが、鋭いスイングを生む秘訣です。
メーカーごとに異なる「角の立ち方」をどう選ぶか
同じ8角形でも、メーカーによって性格が全く異なります。ここはぜひ、店頭で素手で握り比べてほしいポイントです。
- 正8角形に近いタイプ: ヨネックス テニスラケット などは、どの方向に持ち替えても違和感が少なく、オールラウンダーに向いています。
- 扁平(へんぺい)な8角形タイプ: ヘッド テニスラケット などの一部モデルは、上下に潰れたような形をしており、手のひらで面を押し出す感覚が非常に強いのが特徴です。
私は最初、この扁平なグリップに違和感を覚えましたが、ストローク中心のプレーに切り替えた途端、これほど面を安定させやすい形状はないと驚きました。
結論:8角形を「意識」した瞬間、ラケットは体の一部になる
もしあなたが今、「ショットが安定しない」「グリップが滑る」と感じているなら、一度オーバーグリップを外して、その下にある純粋な8角形の角を指先で確認してみてください。
ボウブランド オーバーグリップ のような薄手でフィット感の高いテープを使い、角の感触をあえて残すように巻くのも一つの手です。
ラケットは単なる道具ではありません。8角形の角一つひとつが、あなたの意思をボールに伝えるセンサーです。この「角」を味方につけた時、あなたのテニスやバドミントンは、今よりももっと自由で、精密なものになるはずです。


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