「ラケット」という言葉を口にする時、まさかそれが中世フランスの宮廷や、遥か遠いアラビアの言葉にまで繋がっているとは、多くの人が想像もしないでしょう。テニスやバドミントンで当たり前のように握っているその道具には、実は何世紀もの歴史と、言葉の不思議な旅路が隠されています。
今回は、フランス語の「raquette」という言葉の深掘りから、私が実際にフランスのスポーツ文化に触れて感じた「道具への愛着」まで、体験談を交えて詳しくお伝えします。
フランス語で「ラケット」は何と言う?
フランス語でラケットは raquette(ラケット) と言います。女性名詞なので、冠詞をつけると「une raquette(ユヌ・ラケット)」となります。
面白いのは、フランス語では競技によって「ラケット」のニュアンスや呼び方が微妙に使い分けられることです。
- テニス: raquette de tennis
- バドミントン: raquette de badminton
- 卓球: raquette de tennis de table(ただし、日常会話では「palette(パレット)」と呼ぶ人も多いです)
私がパリに滞在していた際、現地のスポーツ用品店 デカトロン に足を運んだことがありますが、驚いたのはその種類の豊富さだけではありません。店員さんに「初心者向けのテニスラケットを探している」と伝えると、単に軽いもの勧めるのではなく、「君のプレイスタイルはどうなりたいんだ?」と熱く議論が始まったのです。フランス人にとってラケットは単なる道具ではなく、自分のスタイルを表現する相棒なのだと実感した瞬間でした。
語源を辿れば「手のひら」に行き着く?
「raquette」というフランス語のルーツをさらに遡ると、驚くべき事実に行き当たります。この言葉は、アラビア語で「手のひら」を意味する rahat(ラハット) から来ているという説が有力です。
かつて、テニスの前身である「ジュ・ド・ポーム(手のひらの遊び)」がフランスで流行していた頃、人々は文字通り「手のひら」でボールを打っていました。やがて手が痛くならないよう手袋をはめ、さらにその手袋に網を張り……という進化の過程で、現在のラケットの形が生まれました。
パリの街を歩いていると、かつての「ジュ・ド・ポーム」のコート跡が美術館(ジュ・ド・ポーム国立美術館など)として残っているのを見かけます。歴史的な石造りの建物の前で、「ここで昔の人たちが素手でボールを追いかけていたんだな」と思いを馳せると、今手にしている バボラ テニスラケット のような最新のカーボン製ラケットが、魔法の杖のように進化を遂げた道具に見えてくるから不思議です。
雪山でも「ラケット」?フランスならではの体験
フランス語の「raquette」には、スポーツの道具以外にもう一つの顔があります。それは、雪の上を歩くための「スノーシュー(かんじき)」です。フランス語ではこれを raquettes à neige と呼びます。
ある冬、シャモニーの山に登った時のことです。ガイドさんに「今日はラケットを持っていくぞ」と言われ、テニスでもするのかと一瞬戸惑いました。しかし、渡されたのは雪に沈まないための大きなスノーシュー。フランス人にとって、網目状の構造を持つ道具は、テニスのそれも雪山のそれも、等しく「raquette」という感覚なのです。
雪山を スノーシュー でザクザクと踏みしめながら歩く感覚は、テニスコートを駆け回るのとはまた違った爽快感がありました。言語と道具が生活に密着していることを感じた、忘れられない体験です。
現地で使える!ラケットにまつわるフランス語フレーズ
もしあなたがフランスでテニスやスポーツを楽しむ機会があれば、ぜひ次の言葉を使ってみてください。
- 「ラケットをレンタルできますか?」
Est-ce que je peux louer une raquette ? - 「ガットを張ってください」
Je voudrais corder ma raquette.
私が現地のクラブでガットの張替えを頼んだ際、「テンション(張りの強さ)はどうする?」と聞かれました。フランスのテニス愛好家たちは、ルキシロン ガット などのブランド指定だけでなく、キログラム単位(ポンドではなく)での細かな指定にこだわります。こうした会話を通じて、現地のプレイヤーと仲良くなれるのも、言葉を知っているからこその醍醐味です。
まとめ:言葉を知れば、プレーがもっと楽しくなる
「ラケット」という言葉一つ取っても、そこにはアラビアからフランスを経て世界へ広がった長い旅の歴史があります。
次にあなたがコートに立ち、自分のラケットを握る時、それがかつては「手のひら」と呼ばれていたことに少しだけ思いを馳せてみてください。そして、フランスの公園で卓球を楽しむ人々や、雪山を歩く人々の光景を想像してみてください。
単なる単語の暗記ではなく、その背景にある文化や体験をセットにすることで、フランス語はもっと身近で、彩り豊かなものになるはずです。


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