「最近、どうもショットのコントロールが定まらない」「スマッシュを打つたびに、以前よりも肘に嫌な衝撃が響く気がする」……もしあなたがそう感じているなら、原因はラケットの性能劣化ではなく、手のひらに一番近いパーツ、すなわち「元グリップ」の寿命かもしれません。
多くのプレーヤーがオーバーグリップは頻繁に巻き替えますが、その下にある元グリップ(リプレイスメントグリップ)を新品購入時から一度も替えていないというケースは意外と多いものです。今回は、私が実際に元グリップを放置して後悔した経験と、交換後に感じた驚きの変化をベースに、失敗しない交換のコツをお伝えします。
1. その「握り心地」、実は末期症状かもしれません
私が元グリップの重要性に気づかされたのは、ある夏の練習中でした。どんなに新しいオーバーグリップを巻いても、数分打つだけでグリップが手の中でムニュっと動くような、何とも言えない不安定さを感じたのです。
意を決してオーバーグリップを剥がしてみると、そこには衝撃の光景がありました。元々のグリップが汗を吸いすぎて加水分解を起こし、ドロドロの黒い粘土のようになっていたのです。
元グリップを放置する3つのリスク
- クッション性の完全喪失: 新品時は弾力があったスポンジ層が、長年の圧力でカチカチに潰れます。これが原因で、打球時の微振動がダイレクトに手首や肘に伝わり、テニス肘やゴルフ肘のリスクを高めてしまいます。
- 不衛生な蓄積物: 数年分の汗と皮脂が染み込んだグリップは、雑菌の温床です。剥がした瞬間に漂う、独特の酸っぱい臭いに驚く人も少なくありません。
- グリップの「角」が消える: ラケットの面を感じるために重要な「八角形」の角が、劣化によって丸くなってしまいます。これが「面がどこを向いているか分からない」という感覚の正体です。
2. 実践!元グリップ選びと交換のリアルな体験記
元グリップを交換する際、まず迷うのが「素材」です。私はこれまでヨネックス リプレイスメントグリップのような標準的なシンセティックタイプと、プロ仕様のフェアウェイ レザーグリップの両方を試してきました。
シンセティック vs レザー:使ってみて分かった違い
標準的なシンセティックタイプは、とにかく手に優しいのが魅力です。「モチッ」としたホールド感があり、ミスヒットした時の痺れを最小限に抑えてくれます。初心者の方や、怪我を予防したい方はこちらを選べば間違いありません。
一方でレザー(本革)は、驚くほど「情報量」が増えます。ラケットの角が指の節々に食い込むため、ボレーの繊細なタッチが格段にやりやすくなりました。ただし、重さが10g前後増えることもあるため、バランスが変わって「ラケットが重くなった」と感じるリスクがある点は注意が必要です。
3. 失敗から学んだ「綺麗に巻く」ための3ステップ
実際に自分で交換作業をしてみると、いくつか落とし穴がありました。私の失敗談を元に、スムーズに仕上げる手順を解説します。
ステップ1:古い糊(のり)との格闘
古いグリップを剥がすと、木製のハンドル部分にベタベタしたテープ跡が残ります。これを放置して上から巻くと、後で凹凸の原因になります。私は3M シールはがしを使用して、完全に木肌が見えるまで綺麗に掃除しました。このひと手間で、握り心地のフラットさが決まります。
ステップ2:巻き始めの「角度」が命
グリップエンドの斜めにカットされている部分を、ハンドルの端にぴったり合わせるのが最初の難関です。ここで隙間が空くと、使っているうちにエンドキャップがガタついてきます。最初は少し強めに引っ張りながら、1周目を隙間なく固定するのがコツです。
ステップ3:バドミントン競技者なら「アンダーラップ」
もしあなたがバドミントンプレーヤーなら、元グリップを剥がした後にヨネックス アンダーラップを巻いて太さを調整するのも一つの手です。私は元グリップをあえて外し、アンダーラップの巻き数で自分好みの細さを追求した結果、繊細な指先での操作がしやすくなりました。
4. まとめ:最高の打感は足元ならぬ「手元」から
元グリップを新品のウィルソン リプレイスメントグリップに交換した後、コートに立って最初に放った一打の感触は今でも忘れられません。「自分のラケットって、こんなにマイルドでコントロールしやすかったのか!」と、まるで新しいラケットを買った時のような高揚感がありました。
「まだ使える」と思っているそのグリップ、実はあなたのプレーを制限しているかもしれません。もし1年以上交換していないのであれば、ぜひ一度、その下にある「本当の打感」を取り戻してみてください。道具を労わることは、自分の体を労わること、そして何より上達への一番の近道なのです。


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