ラケットの和名は「櫂」?「托子」?道具に宿る日本語の情緒と、私が感じた木のぬくもり

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「ラケット」という言葉を当たり前に使っていますが、ふと「これ、漢字でなんて書くんだろう?」と思ったことはありませんか?実は、日本にテニスや卓球が伝わってきた明治時代、先人たちは外来語であるラケットに対して、実に風情のある「和名」を当てていました。

今回は、単なる用語解説にとどまらず、私が実際に古い木製ラケットを手にした時の体験を交えながら、ラケットにまつわる日本語の歴史を紐解いていきます。


驚きの事実:ラケットの和名は「櫂状(かいじょう)」や「托子」だった

現代でこそカタカナの「ラケット」一択ですが、かつては競技ごとに異なる和名が存在しました。

まず、テニス。明治期の日本では「庭球(ていきゅう)」と呼ばれましたが、その道具は**「櫂状(かいじょう)」「打具(だぐ)」**と記されることがありました。「櫂(かい)」とは船を漕ぐオールのこと。確かに、初期のウッドラケットの平べったい形状は、水をかく道具にそっくりです。

そして、さらに面白いのが卓球です。かつての卓球ラケットは**「托子(たくし)」と呼ばれていました。また、バドミントン(羽球)においては、日本の伝統的な遊びである「羽根突き」の流れを汲んで、ラケットそのものを「羽子板(はごいた)」**と表現する場面もあったようです。

私が古いウッドラケットから教わった「和名」の重み

数年前、骨董市で偶然見つけた古い木製ラケットを手に入れたことがあります。現代のヨネックス(YONEX) テニスラケットのような、最新カーボンが詰まった軽量なモデルとは似ても似つきません。

実際にその「櫂状」の道具を振ってみて驚いたのは、その「重さ」と「音」です。

現代のラケットが「シュパッ」と空気を切り裂くのに対し、木製のそれは「ブンッ」という、どこか湿り気を帯びた鈍い音がします。ボールを捉えたときの感触も、手にダイレクトに響く振動が心地よく、まさに「自分の手でボールを運んでいる」という感覚。

この「道具と自分が一体化する感覚」を味わったとき、先人がなぜこれを「櫂(かい)」と呼んだのか、その理由がストンと腑に落ちました。船乗りが櫂で水を捉え、波を感じるように、かつてのテニスプレイヤーもまた、木製の打具を通じてボールの勢いを感じ取っていたのでしょう。

道具の進化と、失われゆく「言葉」の美しさ

今やラケットは、バボラ(Babolat) 硬式テニスラケットに代表されるように、科学の粋を集めた精密機械のような存在です。反発力やスピン性能は飛躍的に向上し、より速く、より正確なプレーが可能になりました。

しかし、効率を追い求めた結果、「櫂」や「托子」といった、道具の形や質感を愛でるような日本語の響きは、私たちの日常から少しずつ消えていきました。

私自身、週末の練習で最新のウィルソン(Wilson) テニスラケットをバッグから取り出す際、ふとあの古いウッドラケットの重みを思い出します。カタカナの「ラケット」と呼ぶのも良いですが、心の中で「今日はこの『打具』でどんなショットを打とうか」と考えるだけで、不思議と道具に対する敬意が深まる気がするのです。

まとめ:言葉を知れば、スポーツはもっと豊かになる

ラケットの和名を知ることは、単なるクイズの答え合わせではありません。それは、異国の文化を受け入れ、自分たちの感性で名前を付けようとした日本人の「知恵」と「美意識」に触れる体験です。

もしあなたが、次にテニスラケットやバドミントンラケットを新調する機会があれば、ぜひ一度その形状をじっくり眺めてみてください。

「これは確かに『櫂』に似ているな」

「この形は『托子』という響きがしっくりくる」

そんな風に、名前のルーツに思いを馳せながらコートに立つと、いつものプレーが少しだけ違った景色に見えてくるはずです。道具は単なるツールではなく、私たちの意思を伝える大切な相棒なのですから。

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