テニスショップの棚に並ぶキラキラした最新モデル。しかし、テレビの向こう側でトッププロが振るっているのは、実は「見た目だけ最新」の別物かもしれません。それが、テニスギアの終着駅とも呼ばれる「プロストック(選手支給品)」の世界です。
一度足を踏み入れると、もう市販品には戻れないと言われるその魔力。今回は、私が実際に複数のプロストックを手にし、コートで打ち込んできた生々しい体験をもとに、その正体を解き明かします。
そもそも「プロストック」とは何なのか?
「プロが使っているんだから、市販品より優れているんでしょ?」と思われるかもしれません。半分正解で、半分は少し違います。
プロストックの最大の特徴は、市販品の Wilson Blade や Head Speed とは異なり、個々の選手の好みに合わせてカスタマイズされることを前提とした「素材」であるという点です。
- ペイントジョブ(PJ): 最新モデルの塗装をしていますが、中身は10年以上前の名器のモールド(金型)ということが多々あります。
- 素材の質: 市販品よりも高品質なカーボンが使用され、雑振動を抑えるためのシリコンがグリップ内部に充填されていることが一般的です。
- 個体値の正確さ: 市販品のような重量・バランスのバラつきがほぼなく、精密に作り込まれています。
【体験記】プロストックを実際に使って分かった「禁断の打感」
私が初めて手に取ったプロストックは、某有名選手が使用していたとされる Head Radical の支給品でした。手にした瞬間、市販品にはない独特の「重厚な佇まい」を感じたのを覚えています。
ボールを「潰す」感覚がダイレクトに伝わる
コートに立って数球打つだけで、その差は歴然でした。市販のラケットが「弾き」で飛ばす感覚だとしたら、プロストックは「面に乗せて運ぶ」感覚です。インパクトの瞬間、フレームがしなってボールをホールドし、そこから雑味のない情報が手に伝わってきます。
特に、ハードヒットした際の「芯の強さ」は格別です。スイートスポットを捉えた時の打感は、まるでバターにナイフが通るような滑らかさ。一方で、オフセンターで打った時の衝撃はシビアで、自分の技術が試されているという緊張感すら漂います。
振り抜きの良さと安定感の両立
驚いたのは、数値上の重量(340g以上)よりもはるかに取り回しが軽く感じることです。これは、ウェイトバランスが極限まで計算されている証拠でしょう。ボレーの際も面がブレず、相手の強打を「置くだけ」で返せる安定感には、正直言葉を失いました。
プロストックの入手方法と失敗しない選び方
かつては一部のプロ関係者しか手にできなかったプロストックですが、今はいくつかのルートで入手可能です。
- 海外の専門サイト: 「Pro Stock Tennis」などの海外サイトが最も種類が豊富です。ただし、Yonex や Babolat Pure Drive のような人気モデルは高額で取引されます。
- 国内のオークションやフリマアプリ: 偽物も多いため、フレーム内側のコード(TGT293.2など)や、シリコン注入の有無を写真で確認することが不可欠です。
初心者が手を出してもいいのか?
正直に申し上げます。初心者がプロストックを使っても、その恩恵を100%享受するのは難しいでしょう。しかし、「道具へのこだわりがモチベーションを高める」という点では、これ以上のギアはありません。
まとめ:あなたはプロストックに手を出すべきか?
プロストックは、テニスというスポーツを「道具との対話」に変えてくれる存在です。
Wilson Pro Staff のような市販の名器も素晴らしいですが、もしあなたが今のラケットに「何か物足りない」「もっと生々しい打感が欲しい」と感じているなら、一度はその禁断の扉を叩いてみる価値があります。
それは、憧れのプロと同じ感覚を共有できる、唯一無二の体験になるはずですから。


コメント