テニスコートで何気なく振っているそのラケット。カーボン繊維の塊が、なぜ時速200kmを超えるサーブを受け止め、狙った場所にボールをコントロールできるのか、不思議に思ったことはありませんか?
「テニスラケットの作り方」を知ることは、単なる知識欲を満たすだけでなく、自分に最適な一本を選ぶための「目」を養うことにも繋がります。今回は、普段は見ることができないラケット工場の心臓部へ、読者の皆さんを案内します。
1. 1ミリの妥協も許さない「レイアップ」の職人技
現代のラケット、例えば ヨネックス VCORE のような高性能モデルの出発点は、意外にも「手作業」です。
ラケットの基となるのは、カーボン繊維に樹脂を染み込ませた「プリプレグ」というシート。これを設計図通りにカットし、細い芯棒に巻き付けていくのですが、ここが職人の腕の見せ所です。繊維の向きを「0度、45度、90度」と緻密に変えて重ねることで、フレームの「しなり」と「ねじれ剛性」をコントロールします。
実際に工場で見学すると、職人たちがまるでお菓子を作るかのような繊細さで、数ミリのズレもなくシートを積み上げていく姿に圧倒されます。この「レイアップ」の精度が、私たちがコートで感じる「絶妙な打球感」の正体なのです。
2. 金型の中で吹き込まれる「命」:モールディング工程
シートを巻き終えた「長い棒」をラケットの形をした金型に入れ、いよいよ加熱成形(モールディング)に入ります。
ここで魔法のような仕掛けがあります。フレームの内側に特殊な管を通し、高圧の空気を送り込むのです。すると、内側からカーボンが金型に押し付けられ、あの美しい曲線が焼き固められます。
焼き上がった直後のフレームを手に取ると、まだ熱を帯びており、軽く叩くと「キンッ」という高い金属のような音がします。この瞬間、バラバラだったカーボンシートが一つの「楽器」のような共鳴体へと生まれ変わるのです。
3. 0.1g単位の執念!塗装とバランス調整
成形されたフレームは、次に研磨と塗装の工程へ進みます。ここで驚くべきは、塗装の「重さ」までもが厳格に管理されている点です。
例えば、プロも愛用する ウィルソン PRO STAFF のようなラケットでは、左右の重量バランスが崩れることは許されません。塗装の厚みが少し違うだけで、スイングウェイトは変わってしまいます。熟練の塗装工は、スプレーガンの動き一つで、ラケット全体に均一な膜厚を作り上げます。
検品セクションでは、デジタル計測器によって重量、バランスポイント、スイングウェイトが一つひとつチェックされます。基準から外れたものは容赦なく弾かれる。この徹底した品質管理こそが、私たちが安心してフルスイングできる理由です。
4. 自分で「作り上げる」究極のカスタマイズ
工場から出荷されたラケットは完成品ですが、テニス愛好家にとっての「作り方」はここで終わりではありません。
自分だけの打球感を作るために、多くのプレイヤーが キモニー リードテープ を使ってフレームに重りを貼ったり、バボラ タッチトニック のような天然素材のガット(ナチュラルガット)を選んで、自分好みの「味」へとカスタマイズしていきます。
プロ選手の中には、グリップの形状をミリ単位で削り出す職人に依頼し、文字通り「世界に一本」の武器を作り上げる人もいます。既製品をベースに、自分の感覚を形にしていくプロセスもまた、テニスというスポーツの醍醐味と言えるでしょう。
まとめ:その一本に宿る情熱
テニスラケットは、最新のカーボンテクノロジーと、職人たちの血の滲むような手作業が融合して生まれます。
次にショップで ヘッド SPEED などのラケットを手に取ったときは、ぜひフレームをじっくり観察してみてください。その滑らかな塗装の下には、緻密に計算されたカーボンの積層と、最高の一本を届けようとする作り手の情熱が詰まっています。
作り手の意図を知ることで、あなたのテニスはもっと深く、もっと楽しくなるはずです。
次は、あなたのプレースタイルに合わせて**「自分だけのラケットにカスタマイズするための鉛の貼り方ガイド」**を作成しましょうか?


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