「あ、やってしまった……」ハードコートでスライスを深く追いかけた瞬間、ガリッと嫌な音がしてラケットのフレームに痛々しい傷が。テニスプレーヤーなら誰もが一度は経験する絶望の瞬間ですよね。
お気に入りの相棒が傷つくのはショックですが、実はテニスラケットの塗装は、正しい手順さえ踏めば自分でも驚くほど綺麗に修復できます。今回は、私が実際に何度も試行錯誤して辿り着いた、失敗しない「ラケット塗装術」を、部分補修と全塗装の2パターンで詳しくご紹介します。
塗装前に知っておきたい「重量バランス」の罠
実践に入る前に、最も大切な話をします。テニスラケットは非常に繊細なバランスで設計されています。
私が初めて全塗装に挑戦した際、見た目の綺麗さばかりを追求して厚塗りをした結果、ラケットが別物のように重くなってしまった苦い経験があります。一般的に、ラケット全体をしっかり塗装すると3g〜5g程度は平気で重くなります。「たった数グラム」と思うかもしれませんが、先端(トップ)側が重くなるとスイングウェイトが劇的に変わり、肘を痛める原因にもなりかねません。
「塗装はできるだけ薄く、均一に」。これが、プレーの質を落とさないための鉄則です。
パターン1:小さな傷・チップを隠す「部分補修」
フレームの角が少し欠けた程度なら、タッチアップが最も手軽で賢い選択です。
用意するもの
- タッチアップペン: 車用のソフト99 タッチアップペンが色の種類も豊富でおすすめです。
- 耐水ペーパー: タミヤ フィニッシングペーパーの#800と#1500を用意しましょう。
- 脱脂剤: パーツクリーナー
手順とコツ
- 下地作り: 傷の周りのささくれをペーパーの#800で優しく整えます。
- 脱脂: 油分があると塗料が弾かれるので、綿棒にパーツクリーナーを含ませて拭き取ります。
- 点付け: ペンの筆で塗るのではなく、爪楊枝の先に塗料をつけて、傷の凹みに「置いていく」イメージで盛ります。
- 乾燥と研磨: 完全に乾いたら、#1500のペーパーで周囲とフラットになるまで削り、最後にコンパウンドで磨けば、どこに傷があったか分からなくなります。
パターン2:自分だけの一本を作る「全塗装(リペイント)」
デザインをガラリと変えたい、あるいは中古で買ったボロボロのラケットを蘇らせたい場合のステップです。
必要な道具
- スプレー缶: 耐久性を重視するならエアーウレタン一択。ガソリンにも強い強固な皮膜が作れます。
- 下地剤: バンパープライマーなど、カーボンやプラスチックへの密着を高めるもの。
- マスキングテープ: 3M マスキングテープ
失敗しないための実践ステップ
- グロメットを外す: 面倒ですが、これは絶対です。付けたまま塗ると、次にガットを張る時に塗装がバリバリと剥がれます。
- 足付け(最重要): サンドペーパーでラケット全体のツヤが消えるまで磨きます。これをサボると、試合中にボールがフレームに当たった衝撃で塗装がポロポロと剥げ落ちる惨事になります。
- 薄く、何度も: 一気に色を乗せようとすると必ず垂れます。1回目は「色がうっすらつく程度」に吹き、15分置いてからまた吹く。これを4〜5回繰り返すのが、プロ級の仕上がりにする秘訣です。
- 乾燥は数日間: 触れるようになっても、中まで硬化するには時間がかかります。私は最低でも3日間は吊るして放置します。
業者に頼むという選択肢
もし、あなたが「プロ仕様の完璧なスペックを維持したい」のであれば、専門の塗装業者に依頼するのも手です。
費用は1.5万円〜2万円ほどかかりますが、粉体塗装(パウダーコート)などの特殊技術を使えば、DIYよりもはるかに薄く、かつ強固な皮膜が手に入ります。大切な「勝負ラケット」であれば、投資する価値は十分にあるでしょう。
まとめ:愛着こそが最大の武器
自分で苦労して塗装したラケットは、たとえ少しムラができたとしても、世界に一本だけの特別な存在になります。コートに立った時、そのラケットを見るだけでモチベーションが上がる。それこそが、DIY塗装の最大のメリットかもしれません。
まずは小さな傷の補修から、あなたの相棒をメンテナンスしてみませんか?
次の一歩として:
まずは自分のラケットの正確な重さをデジタルスケールで測っておきましょう。塗装前後の変化を知ることで、スイングの違和感を防ぐことができますよ。


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