「あ、あのチェック柄だ」と、テニスコートで一際目を引いた時代を覚えていますか。1980年代から90年代、日本のテニスブームを華やかに彩ったのがキアスポーツ(KIA SPORTS)でした。当時、部活動に励んでいた学生から、週末を優雅に過ごす大人たちまで、多くのプレイヤーがその洗練されたウェアに憧れを抱いたものです。
記憶に残る、唯一無二のエレガンス
キアの最大の特徴は、なんといってもその上品なデザインにありました。当時のテニスウェアといえば、まだシンプルでスポーティーなものが主流でしたが、キアは英国風のトラッドなエッセンスを取り入れた独自のスタイルを確立していました。
特に、パステルカラーや落ち着いたネイビーを基調としたチェック柄のボトムスや、胸元に控えめにあしらわれたロゴ刺繍。それは単なる運動着の域を超え、プレイヤーの品格を底上げしてくれる「勝負服」のような存在でした。私自身、初めてキアのポロシャツに袖を通した時の、あの少し背筋が伸びるような感覚は今でも忘れられません。
現代における「キアスポーツ」の希少価値
残念ながら、現在キアスポーツは国内でのライセンス展開を終了しており、スポーツ用品店の店頭で新品を見かけることはほぼありません。だからこそ、今あえてキアを身に纏うことは、ヴィンテージファッションとしての深い味わいがあります。
最近の主流である吸汗速乾性に特化したポリエステル素材のウェアも機能的で素晴らしいですが、キアが持っていた、どこか温かみのある生地感や、しっかりとした縫製による耐久性は、使い込むほどに愛着が湧くものです。当時のウェアを今でも大切に保管し、メンテナンスしながら着続けているベテランプレイヤーを見かけると、そのブランドが築き上げた質の高さを再確認させられます。
今から手に入れるための現実的なルート
では、今から「あの頃のキア」を手に入れるにはどうすれば良いのでしょうか。主な手段は、フリマアプリやネットオークションによる二次流通です。
- メルカリやヤフオクの活用: 「ヴィンテージ テニスウェア」や「キア レトロ」といったキーワードで検索すると、当時のデッドストックや状態の良い古着が見つかることがあります。
- サイズ感に注意: 80〜90年代のウェアは、現代のスリムフィットなウェアと比べてシルエットがゆったりしていることが多いです。実寸を確認することをお勧めします。
- 状態の確認: 長期保管によるゴムの劣化や、ロゴの剥がれがないか、出品写真で念入りにチェックするのが失敗しないコツです。
クラシックスタイルを現代に繋ぐ
もしキアが手に入らなくても、そのスピリットを継承しているブランドはあります。例えば、フィラ(FILA)やエレッセ(ellesse)のヘリテージラインは、当時のレトロな空気感を現代の機能性で再現しています。
しかし、やはりキアスポーツというブランドが放っていた、あの独特の「お洒落な大人の余裕」は、代えがたいものがあります。もしクローゼットの奥に眠っている一着があるなら、ぜひもう一度手に取ってみてください。あるいは、古着屋で運命の一着に出会ったなら、迷わず手に入れるべきです。
流行は巡りますが、本物が持つ風格は色褪せません。キアスポーツのウェアを纏ってコートに立つ。それは、効率や機能性だけでは語れない、テニスというスポーツの豊かな文化を愉しむ、最高の贅沢なのかもしれません。


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