かつて、土のトラックからオールウェザーへと時代が変わっても、日本のスプリンターの足元を支え続けてきた名器があります。それがアシックスの「JAPAN」シリーズです。しかし、近年の厚底・カーボンブームにより、スパイクの概念は一変しました。
「伝統の履き心地は捨てがたいが、最新のカーボン反発も欲しい」。そんな欲張りな競技者の願いを具現化したのが、今回紹介するasics ジャパンプロです。実際に競技場で履き込み、そのポテンシャルを肌で感じた筆者が、リアルな使用感を踏まえて解説します。
伝統と革新の融合:asics ジャパンプロの正体
手に取った瞬間、懐かしさと新しさが同居する不思議な感覚に包まれました。アッパーの質感は、まさに私たちが信頼してきた「あのJAPAN」そのもの。しかし、ソールを指で押し込んでみると、そこには現代のテクノロジーが牙を剥いています。
カーボンプレートがもたらす「未知の押し出し」
asics ジャパンプロの最大の特徴は、フルレングスで搭載されたカーボンプレートです。これまでのJAPANシリーズは、自分の力で地面を蹴り出す感覚が強かったのに対し、今作は接地した瞬間にプレートがしなり、勝手に体が前へと放り出されるような感覚があります。
「メタスプリント」との決定的な違い
同じアシックスのフラッグシップであるメタスプリントとどちらにするか、悩んでいる方も多いでしょう。メタスプリントがピンレスによる究極の接地感と硬さを追求しているのに対し、asics ジャパンプロは従来のニードルピン(または取替式ピン)を採用しています。これにより、コーナーリングでの安心感や、天候に左右されない確実なグリップ力を確保しています。
実走してわかった、このスパイクの「性格」
実際に100mの流しと、コーナー走を含む150mのセット練習でasics ジャパンプロを試しました。
- フィット感の極致:HL-0メッシュを採用したアッパーは、足の熱を逃がしながらも、高速走行時のブレを完璧に抑え込んでくれます。
- 接地感のバランス:厚底すぎることもなく、かといって薄すぎて足裏が痛くなることもない。カーボンの硬さは感じますが、プレートの反発ポイントが分かりやすいため、ピッチ型・ストライド型問わず扱いやすい印象です。
- コーナーの安定性:ピンがしっかりトラックを噛むため、200mや400mのコーナーでも足が外に流れる不安が一切ありません。
メリットと、あえて伝えたいデメリット
asics ジャパンプロは素晴らしい一足ですが、万能ではありません。
- メリット
- 圧倒的な加速性能と後半の失速を防ぐ反発力。
- JAPANシリーズ譲りの高いフィット感。
- ピンの取替が可能なため、トラックの状況に合わせやすい。
- デメリット
- プレートが非常に硬いため、筋力不足だと「足が売り切れる」可能性がある。
- 価格設定が高め。
サイズ感と選び方のアドバイス
筆者は普段、アシックスのランニングシューズを27.0cmで履いていますが、asics ジャパンプロも同じ27.0cmでジャストでした。
ただし、このスパイクはタイトな作りになっているため、幅広の方は0.5cm上げるか、必ず一度ソックスを履いた状態で試着することをお勧めします。指先が余りすぎるとカーボンの反発ポイントがズレてしまうため、土踏まずのアーチがしっかりフィットしているかを確認してください。
結論:asics ジャパンプロはあなたの記録を塗り替えるか?
結論から言えば、このスパイクは「現代スプリントの正解」の一つです。
かつてのJAPANシリーズのような「素足感覚」を大切にしつつ、最新の「カーボンによるブースト」を手に入れたい選手にとって、asics ジャパンプロ以上の選択肢は他にありません。特に100mの後半で体が浮いてしまう感覚がある人や、200mのコーナーを攻めたい選手には、最高の相棒になるはずです。
この一足で、まだ見ぬ自己ベストの領域へ足を踏み入れてみませんか。


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