テニスを始めてしばらく経つと、誰もがぶつかる壁があります。「ラケットは変えていないのに、なぜか今日はボールが飛ばない」「肘が痛いのは打ち方のせい?」――。その答えの多くは、実は「ガット(ストリング)」にあります。
テニス界では「ラケットは土台、ガットはエンジン」と言われるほど、ボールの威力やコントロールを左右する重要な要素です。今回は、これまで30種類以上のガットを自ら張り替え、試し打ちしてきた筆者の経験をもとに、各素材の特徴と「絶対に失敗しない選び方」を徹底解説します。
1. 3大素材の徹底比較:あなたの「理想の打感」はどれ?
ガット選びの第一歩は、素材を知ることから始まります。ショップの壁一面に並ぶパッケージに圧倒される必要はありません。基本は以下の3つのカテゴリーに分けられます。
① ナイロン(Nylon):初心者からベテランまで愛される万能選手
最も一般的で、扱いやすい素材です。「迷ったらまずはナイロン」と言われるほど、反発力と柔らかさのバランスに優れています。
- 筆者の体験談: 初心者の頃、カッコいいからという理由だけでプロ仕様の硬いガットを張ったことがありますが、ボールが全く飛ばず、無理に飛ばそうとして手首を痛めてしまいました。その後GOSEN ミクロスーパー16に戻した瞬間、余計な力を入れなくてもボールが深く飛ぶようになり、テニスが急に楽になったのを覚えています。
② ポリエステル(Polyester):スピンとパワーでねじ伏せる中上級者の武器
「ポリ」と呼ばれるこの素材は、非常に硬く、耐久性が高いのが特徴です。
- 筆者の体験談: スイングスピードが上がってくると、ナイロンではボールが吹っ飛んでしまう(アウトが増える)ようになります。そんな時にルキシロン 4Gのようなポリを張ると、強打してもボールがしっかりコート内に収まるようになります。ただし、衝撃は強いので「ガットが1ヶ月以内に切れる」人以外は慎重に選ぶべきです。
③ ナチュラル(Natural):牛の腸から作られる究極のストリング
プロの多くが使用する最高級品。圧倒的なホールド感と、腕への優しさは別格です。
2. ナイロン選びの深掘り:「モノ」と「マルチ」の違い
ナイロンと一口に言っても、構造によって性格が180度変わります。
- ナイロン・モノ構造: 芯がしっかりしており、パチーンと弾く爽快な打球感が魅力。ボレーでパンチを出したいダブルスプレイヤーにおすすめです。筆者も一時期プリンス ライトニングXXを使用していましたが、あの乾いた打球音はモチベーションを上げてくれます。
- ナイロン・マルチ構造: 細い繊維を束ねて作られており、まるでナチュラルのような柔らかさがあります。テクニファイバー TGVなどは、打った瞬間にボールがガットに吸い付くような感覚があり、コントロール重視の方には最高の選択肢になります。
3. 「多角形ポリ」と「ハイブリッド」という魔法
最近のトレンドは、断面が5角形や8角形になった「多角形ガット」です。
- 多角形ポリの威力: バボラ RPMブラストのようなガットは、エッジがボールに噛み付くため、スピン量が劇的に増えます。筆者が初めて多角形を使った際、アウトだと思った軌道から急激にボールが沈み、相手の足元に突き刺さった時の快感は忘れられません。
- ハイブリッドという折衷案: 「ポリの性能は欲しいけど、硬すぎるのは嫌だ」というワガママを叶えるのが、縦と横で違うガットを張るハイブリッドです。縦にヨネックス ポリツアープロ、横にウィルソン NXTを組み合わせることで、スピン性能とマイルドな打感を両立できます。
4. 「寿命」の罠。切れていなくても寿命は来ている!
ここが最も重要なポイントです。「切れるまで使う」のは、実は非常にもったいない(そして危険な)行為です。
- ポリは1ヶ月で「死ぬ」: ポリエステルガットは、張った瞬間から弾力が失われ始めます。1ヶ月も経つと、ただの「伸び切った輪ゴム」状態になり、飛ばない・衝撃が強い・コントロールできないという三重苦に陥ります。
- ナイロンは3ヶ月が目安: 表面に毛羽立ちが出てきたり、打球音が「ボフッ」と鈍くなったら交換のサイン。張り替えたばかりのバボラ アディクションで打つ1球目は、まるでラケットを新品に買い替えたような感動があります。
5. まとめ:自分だけの「魔法の1本」を見つけるために
ガット選びに正解はありませんが、失敗しないためのルートはあります。
- 腕に不安がある・楽に飛ばしたい → ナイロン・マルチを48ポンド程度で。
- ガンガン振っていきたい・スピンをかけたい → ポリエステル(多角形)を試す。
- 今の打感が好きだけど少し変えたい → 同じ種類のガットで太さ(ゲージ)を変えてみる。
ガットが変われば、あなたのテニスは劇的に変わります。まずは次の週末、いつものショップで「いつもと違う1本」を手に取ってみてください。その小さな変化が、あなたの「最高の一打」を引き出すきっかけになるはずです。
次は、あなたの具体的なスイングの悩み(例:ボールが浅くなる、肘が痛いなど)に合わせて、具体的なテンション(張る強さ)の調整方法についても考えてみましょう。


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