「フラットな着地で、もっと自然に走りたい」——そんな思いでゼロドロップシューズを探し始めると、必ずぶつかる壁があります。それは、日本が誇る世界のASICS(アシックス)には、実は「完全なゼロドロップ」のラインナップがほとんど存在しないという事実です。
私自身、長年アシックスのフィット感を愛用しながら、ベアフット(裸足)感覚の走りに目覚めた時期がありました。あの包み込まれるようなホールド感のまま、カカトの高低差がない一足があれば最高なのに……と、ショップの棚を端から端までチェックしたものです。
本記事では、アシックスの設計思想を紐解きながら、ゼロドロップ派のランナーでも納得できる「低ドロップ」な代替モデルと、その賢い選び方を実体験ベースで解説します。
なぜアシックスには「ゼロドロップ」がないのか?
結論から言うと、アシックスは「足を守り、効率的に前へ進む」ことを最優先しているからです。多くのモデルはカカトが8〜12mmほど高く設計されており、これによりアキレス腱への負担を減らし、スムーズな重心移動をサポートしてくれます。
しかし、最近のトレンドである「ナチュラルランニング」の視点で見ると、この段差が邪魔に感じることもありますよね。そこで注目したいのが、アシックスの中でも異彩を放つ「低ドロップ」モデルたちです。
ゼロドロップに近い感覚で走れるアシックス厳選モデル
完全な0mmではなくても、5mm以下の低ドロップであれば、着地時の違和感は驚くほど少なくなります。私が実際に足を通して「これはゼロドロップに近い!」と感じた精鋭を紹介します。
1. スピードとフラット感の両立:METASPEED Sky+
アシックスの最速モデルであるMETASPEED Sky+は、ドロップ差が約5mmに抑えられています。厚底でありながら、前作よりもフラットな接地感が増しており、ミッドフットからフォアフットで着地するランナーにはたまらない推進力を提供してくれます。
2. トレイルで本領発揮する低ドロップ:FUJI SPEED
不整地を走るトレイルシューズFUJI SPEEDは、地面の情報をダイレクトに捉えるためにドロップが低めに設定されています。ロード用の高ドロップ靴に慣れている人が履くと、その「地面を掴む感覚」の鋭さに驚くはずです。
3. 安定感重視の低ドロップ:GEL-FujiTrabuco
山道をタフに走破するためのGEL-FujiTrabucoシリーズも、比較的低ドロップな設計が採用されています。クッション性は欲しいけれど、カカトが高すぎてグラつくのは嫌だというワガママなニーズに応えてくれる一足です。
ゼロドロップ派がアシックスを選ぶ際の「落とし穴」と対策
もしあなたが普段、ALTRA(アルトラ)のような完全ゼロドロップを履いているなら、アシックスへの移行には少し注意が必要です。
- ふくらはぎの張りを確認する: 5mmの差でも、使う筋肉は微妙に変わります。最初は短い距離からテストすることをおすすめします。
- インソールで調整しない: ドロップを消そうとしてカカトを削るような改造は厳禁です。靴の構造自体が壊れてしまいます。
私は以前、無理に高ドロップのGEL-KAYANOでつま先着地を意識しすぎ、足裏を痛めた苦い経験があります。アシックスの良さを引き出すなら、その靴が持つ本来のドロップに身を任せるか、最初から低ドロップなモデルを選ぶのが正解です。
まとめ:日本人の足を知り尽くした「低ドロップ」という選択肢
「ゼロドロップがないからアシックスは諦める」というのは、少しもったいないかもしれません。あの吸い付くようなヒールカウンターの形状や、日本人の幅広な足に寄り添うラスト(木型)は、唯一無二の魅力です。
まずはMETASPEEDシリーズなどの5mm前後のモデルから試してみてください。ゼロドロップ特有の「自分で地面を蹴る感覚」と、アシックスの「守られている安心感」が、絶妙なバランスで共存していることに気づくはずです。
「0か100か」ではなく、あなたの走りに最適な「数ミリ」を見つける旅に出かけましょう。


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