山道を走るトレイルランナーや、雨の日の通勤で足元の滑りにヒヤリとした経験がある方にとって、シューズの「底力」は死活問題です。私自身、これまで数々のシューズを履き潰してきましたが、最終的に行き着いた安心感の正体は「アシックスのフィッティング」と「ヴィブラムのグリップ」という、いわば日伊の技術が融合したハイブリッドな一足でした。
なぜ、あえてアシックスで「ヴィブラム」を選ぶのか
アシックスにはASICSGRIPという、非常に優秀な自社開発の外底(アウトソール)が存在します。粘り気のある質感で、濡れた岩場でもピタッと吸い付く感覚は唯一無二です。しかし、そんなアシックスが一部のフラッグシップモデルに、あえて世界的なソールメーカーであるヴィブラム社のソールを採用しているのには明確な理由があります。
それは、圧倒的な「信頼の歴史」と「状況に応じた最適化」です。特にヴィブラム社の「メガグリップ」は、泥、岩、砂利、そして濡れたタイルなど、あらゆる路面状況において、期待を裏切らない一貫したパフォーマンスを発揮してくれます。
実際に履いてわかった、ヴィブラム搭載モデルの真価
私が愛用しているGEL-TRABUCOを例に挙げると、まず驚くのはその「安心の持続性」です。トレイルの後半、足が疲れて着地が雑になりがちな場面でも、ヴィブラムの深いラグ(突起)がしっかりと地面を噛んでくれます。
また、意外と知られていないのが「耐久性」の高さです。グリップ力が高いソールは往々にして摩耗が早いものですが、Vibramのソールは、舗装路を長く歩いても目に見えて減っていくような不安がありません。結果的に、一足のシューズを長く、最高のコンディションで使い続けられるため、コストパフォーマンスは非常に高いと感じています。
ライフスタイルに溶け込むヴィブラム
最近では、本格的な競技モデルだけでなく、Kiko Kostadinov監修のモデルなど、街履きを意識したライフスタイルシューズにもヴィブラムソールが採用されています。
「オーバースペックじゃないか?」と思うかもしれませんが、雨の日の駅の階段や、不意に現れる大理石の床など、都市生活にも「滑るリスク」は潜んでいます。アシックス特有の、足を包み込むような優しいホールド感に、ヴィブラムの力強い安定感が加わることで、歩くこと自体のストレスが驚くほど軽減されるのです。
選び方のポイント:あなたの主戦場はどこか?
もしあなたが、クッション性とグリップ力の究極のバランスを求めるなら、厚底のTRABUCO MAXが最適解になるでしょう。逆に、地面の感覚を繊細に捉えながらテクニカルな道を攻めたいなら、スタンダードなGEL-TRABUCOシリーズが裏切りません。
アシックスの技術者が、あえて自社製ではなく「ヴィブラム」を選択したその意図。それは、ユーザーに「どんな場所でも、自分を信じて一歩を踏み出してほしい」というメッセージに他なりません。一度この安心感を体験してしまうと、もう普通のソールには戻れなくなる。それほどまでに、この組み合わせは完成されているのです。


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