泥を跳ね上げ、轍を切り裂き、コーナーの出口でフロントを浮かせて加速する。オフロードバイクの醍醐味は、路面との対話に集約されます。その対話の質を決定づけるのが、タイヤという唯一の接点です。私が長年泥遊びに興じてきて、結局最後に戻ってくるのがダンロップのGEOMAX(ジオマックス)シリーズでした。
「どれを履いても同じだろう」と考えていた時期もありましたが、それは大きな間違い。路面状況に合わないタイヤを選ぶことは、氷の上でスニーカーを履いて走るようなものです。今回は、コースや用途に合わせてどれを選ぶべきか、現場の感覚を交えて深掘りします。
走る場所が決まれば、選ぶべきGEOMAXが見えてくる
モトクロスコースに行くのか、あるいはエンデューロの難所に挑むのか。まずは自分の主戦場を明確にしましょう。
1. マッドからソフト路面なら「MX14」
雨上がりのマディなコンディションや、砂が深いコースで圧倒的な推進力を発揮するのがMX14です。スコップのような独自のブロック形状が泥を掴んで放り投げる感覚は、一度味わうと病みつきになります。ただし、硬い路面ではブロックがヨレやすいため、用途を絞った使い方が賢明です。
2. 万能の王道「MX34」
「迷ったらこれ」と言い切れるのが、最新のMX34です。ソフトからミディアム路面までを広くカバーし、接地感がとにかく掴みやすい。コーナーリング中に「あと少し寝かせられる」と思わせてくれる安心感は、ダンロップ独自のPCBT(プログレッシブ・コーナーリング・ブロック・テクノロジー)の恩恵でしょう。初心者から上級者まで、自分の上達をダイレクトに感じられる一本です。
3. 硬質路面の救世主「MX53」
カチカチに踏み固められたハードパックや、乾燥した路面で真価を発揮するのがMX53です。ブロックの剛性が高く、ハイスピード域でも挙動が乱れません。耐久性も非常に高く、練習用として長く履き潰したいライダーにも最適な選択肢です。
林道ライダーが知っておくべき「公道走行」の境界線
ここで注意したいのが、「GEOMAXならどれでも林道に行けるわけではない」という点です。MXシリーズは競技専用設計のため、基本的には公道走行不可。林道ツーリングを愛するなら、以下のモデルが選択肢に入ります。
- EN91: FIM規格に適合したエンデューロタイヤ。公道走行が可能でありながら、濡れた根っこや岩場でのグリップ力は驚異的です。「自走でコースまで行き、そのままハードなセクションを走る」というスタイルならこれ一択。
- AT81: 北米のクロスカントリーシーンで鍛えられたタフなモデル。公道走行可能なサイズ展開があり、ガレ場での弾かれにくさが特徴です。
実際に履き替えて感じた「音」と「指先」の変化
タイヤを新品のGEOMAXに替えた瞬間、まず変わるのはマシンの排気音の響き方です。スリップが減り、エンジンのパワーが確実に路面へ伝わるため、音に力強さが宿ります。
また、ハンドルに伝わる振動からも「今、ブロックがどの程度土を噛んでいるか」が手に取るように分かります。このインフォメーションの豊かさこそが、ダンロップが長年トップライダーに支持される理由だと確信しています。
結論:あなたの「次の一本」は?
タイヤ選びを妥協すると、バイクの性能を半分も引き出せません。
まずは自分の走るフィールドを思い浮かべてみてください。新しいGEOMAXを装着したその日、あなたの愛車は間違いなく別物に進化しているはずです。


コメント