ガレージの奥に眠っていた、あるいは古着屋の軒先でふと目に止まった、色褪せたネイビーに赤いロゴ。「これ、かっこいいな」と直感で手に取った一着が、ダンロップ n-121だったという方は少なくないはずです。
モータースポーツが熱狂を極めた80年代から90年代にかけて、整備士たちの相棒として現場を支えてきたこのメカニックスーツ。単なる「作業着」として片付けるには惜しい、現代の既製品にはない野暮ったさと機能美が同居しています。
実際にダンロップ n-121に袖を通してみると、まず驚くのがその生地の「硬派さ」です。近年の軽量ストレッチ素材とは対極にある、肉厚でタフなコットン混紡生地。新品のときはゴワゴワとしていたであろうその質感も、時を経て洗濯を繰り返されることで、まるでヴィンテージデニムのように自分の体に馴染む柔らかさへと変化しています。
背中の腰部分にある「蛇腹構造」も、このモデルの語るべきポイントです。深くしゃがみ込んでも背中が突っ張らず、スムーズに動ける設計。機能から生まれたこのデザインは、今見ると非常にレーシーで、ストリートでのセットアップ風の着こなしにも意外なほどハマります。
サイズ感については、当時の設計ゆえに現代の「スリムフィット」とは無縁です。全体的にゆったりとしたボックスシルエットで、股上も深め。筆者の経験上、普段のサイズよりもワンサイズ上を選んで、上半身を腰に巻いて「ツナギスタイル」として着崩すのが、今の空気感には一番しっくりくると感じています。
現在、このダンロップ n-121を新品で手に入れることは非常に困難です。主な入手先はフリマアプリやヴィンテージショップになりますが、チェックすべきは「ワッペンの状態」と「オイル汚れの残り方」です。胸元に鎮座するDUNLOPのロゴが綺麗に残っている個体は希少で、多少のオイル染みがある方が、かえってこのスーツが歩んできた「物語」を感じさせてくれます。
流行り廃りの激しいファッション界において、ダンロップ n-121のような実質剛健なアイテムは、一度手に入れると長く付き合える一生モノになり得ます。バイクいじりに没頭するもよし、無骨なアメカジとして街に繰り出すもよし。この一着が持つ「本物」の重みを、ぜひ肌で感じてみてください。


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