ゴルフバッグの奥底や実家の納戸を整理していて、ふと見慣れない、けれどどこか気品のあるロゴが刻まれたボールを見つけたことはないでしょうか。それがダンロップ ロイヤルマックスフライであれば、あなたは日本のゴルフ史における「宝物」を手にしたも同然です。
かつて、日本のプロゴルフ界がもっとも熱かった1970年代から90年代にかけて。あのジャンボ尾崎プロが圧倒的な強さを誇っていた時代、その足元にはいつもロイヤルマックスフライがありました。今のカチッとした硬い打感のボールしか知らない世代には想像もつかないような、指先にまで伝わる「吸い付く感覚」がそこにはあったのです。
時代を象徴した「糸巻きボール」の魔力
今のボールの主流は、プラスチックのような素材(アイオノマーやウレタン)を何層にも重ねた構造ですが、ロイヤルマックスフライの真髄は「糸巻き」構造にあります。コアに細いゴム糸を何重にも巻き付けたその構造は、インパクトの瞬間にボールがフェースに長く留まり、強烈なバックスピンを生み出しました。
当時、パー5の2打目をアイアンで狙い、グリーンに落ちた瞬間にキュキュッとバックスピンで戻る。あの快感こそがゴルフの醍醐味であり、その演出にロイヤルマックスフライは欠かせない存在でした。現代の高性能なスリクソンやゼクシオのボールも素晴らしいですが、あの柔らかく、どこか切ないほど繊細な打感は、当時のダンロップにしか出せない味だったと言えるでしょう。
今、手元にあるボールは「使える」のか?
もし、あなたがデッドストックのロイヤルマックスフライを見つけ、「次のラウンドで使ってみよう」と考えているなら、少しだけ待ってください。残念ながら、糸巻きボールには宿命的な「寿命」があります。
- ゴムの劣化: 中のゴム糸は20年、30年という歳月で確実にもろくなります。打った瞬間に本来の飛びが得られないばかりか、最悪の場合、中で糸が切れてボールが変形することもあります。
- カバーの変質: かつてのバラタカバーは非常にデリケートです。未使用品でも黄ばみや硬化が進んでいることが多く、本来の性能を発揮するのは難しいでしょう。
今のダンロップの最新ボールと比較すると、飛距離性能では到底及びません。しかし、それは性能が劣っているというより、一つの時代が完成させた「工芸品」のようなものだと考えるのが正解です。
ブランドの変遷と、受け継がれるDNA
現在、日本国内でロイヤルマックスフライの新品を購入することはできません。ブランド名は海外へと渡り、時代の流れとともにダンロップの主力はスリクソンへとシフトしていきました。しかし、あの「プロが認める究極のソフトフィーリング」へのこだわりは、間違いなく今のスリクソン Z-STARなどの開発思想に息づいています。
もし新品同様のロイヤルマックスフライをお持ちなら、コースで失くしてしまうよりも、書斎のデスクに飾っておくことをおすすめします。それは単なるゴルフボールではなく、日本のゴルフ黄金時代を駆け抜けた戦友たちの記憶そのものなのですから。
かつて「いつかはロイヤルマックスフライを使いこなせるシングルになりたい」と夢見たあの頃の情熱。それを思い出しながら、今の進化したダンロップのギアを手に取るのも、また一興ではないでしょうか。


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