「長年連れ添った愛機が傷だらけで見栄えが悪い」「プロトタイプのような真っ黒なラケットに憧れる」
テニスプレーヤーなら一度は「自分でラケットを塗れたら……」と考えたことがあるのではないでしょうか。
しかし、テニスラケットは繊細なカーボン製品です。適当に塗れば、重さが変わって振り抜けが悪くなったり、打球感がガチガチに硬くなったりと、後悔するリスクも隣り合わせ。
今回は、実際に何本ものラケットを「自家塗装」してきた筆者の実体験をもとに、失敗しないための手順と、性能を損なわないための極意を伝授します。
テニスラケットを塗る前に知っておくべき「3つのリスク」
自分で筆やスプレーを握る前に、まずは現実をお伝えします。ここを無視すると、愛機が「ただの棒」になりかねません。
- 重量とバランスの変化:一般的なスプレー塗装を雑に行うと、ラケットは5g〜10gほど重くなります。特にヘッド部分に塗料が乗ると、バランスポイントがトップヘビーに寄り、別物のラケットになります。
- 打球感の硬化:塗膜はフレームの「しなり」を阻害します。厚塗りしすぎると、本来のマイルドな打球感が失われ、肘に響くような硬さが出ることがあります。
- 塗装の剥がれ:テニスは激しい振動を伴うスポーツです。適切な下地処理を怠ると、一回のスマッシュでペリッと塗装が剥がれる悲劇が起きます。
準備するもの:プロの仕上がりに近づけるための道具リスト
DIY塗装の成否は、塗る瞬間ではなく「準備」で8割決まります。
- サンドペーパー(#400 / #800):古い塗装を削り、新しい塗料の食いつきを良くする「足付け」に必須です。
- シリコンオフ:表面の油分を飛ばす脱脂剤。これがないと塗料が弾かれます。
- ミッチャクロン:プライマー(下地剤)。カーボンや金属への密着力を劇的に高めます。
- ボデーペン:自動車用の補修スプレーは粒子が細かく、耐久性も抜群です。
- ウレタンクリアー:仕上げの保護剤。ガソリンや衝撃に強く、高級感のあるツヤが出ます。
- マスキングテープ:グリップやグロメット穴を保護するために、糊残りの少ないものを選びましょう。
【実録】ステップ別:ラケット塗装の正しい手順
1. 全分解(ストリップ)
まずはストリングを切り、グロメットをすべて外します。体験から言えるのは、**「グロメットをつけたまま塗るのは絶対NG」**ということ。隙間から塗装が剥がれる原因になります。
2. 表面研磨と脱脂
#400のヤスリで、元の塗装のツヤがなくなるまで全体を磨きます。地肌を出す必要はありませんが、段差をなくすのがコツ。その後、シリコンオフで入念に拭き上げます。
3. マスキングと下地処理
グロメットの穴や、グリップエンドの内側を丁寧にマスキングします。その後、ミッチャクロンを薄く吹き付け、塗料が剥げにくい土台を作ります。
4. 塗装(ここが本番!)
一度に色を乗せようとするのは最大の失敗の元です。**「15cm〜20cm離して、パラパラと霧をかけるように」**を意識してください。3回〜5回に分けて重ね塗りをします。
筆者の失敗談:焦って一度に厚塗りしたところ、グロメット穴に塗料が溜まり、乾いた後にグロメットが二度と入らなくなったことがあります。穴付近は特に薄く!
5. クリアコーティングと乾燥
色が乗ったら、ウレタンクリアーで保護します。最後に一番大切なのが「待つこと」。触りたい気持ちを抑え、最低でも48時間、できれば1週間は風通しの良い場所に吊るして完全に硬化させましょう。
性能を落とさないためのこだわりテクニック
「重さを変えたくない」という方は、クッキングスケールでグラム単位の計測をしながら塗ることをおすすめします。
私はいつも、塗装前と各工程後に重量をチェックします。塗料の乗りすぎを防ぐ目安になり、元々のスペックを維持したままカラーチェンジが楽しめます。
また、ロゴを入れたい場合は、カッティングシートで自作のステンシルを作っておくと、市販品のようなクオリティに仕上がります。
まとめ:自分だけの相棒を作り上げる悦び
テニスラケットを自分で塗るのは、決して楽な作業ではありません。手間も時間もかかりますが、苦労して塗り上げたラケットをコートに持ち出す時の高揚感は格別です。
「性能重視ならプロの塗装業者へ、愛着重視ならDIYで」
もし、押し入れに眠っている古いラケットがあるなら、まずは練習台として一本塗ってみてはいかがでしょうか?あなたのテニスライフが、より彩り豊かなものになるはずです。
次の一歩として、まずはサンドペーパーを手に入れて、ラケットの小傷を整えるところから始めてみませんか?


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