スポーツ用品店のテニスコーナーに行くと、片や3,000円、片や35,000円。同じ網のついた棒に見えるのに、なぜこれほどまで価格が違うのか、不思議に思ったことはありませんか?
「最初は安いのでいいよ」というアドバイスを真に受けて、数千円のレジャー用ラケットでスクールに通い始めた結果、手首を痛めて数ヶ月棒に振った……というのは、実はテニス界隈ではよくある悲劇です。
今回は、値段の裏側に隠された「素材」と「衝撃」の真実、そして実際に打った時にしか分からない「体験の差」を深掘りします。
1. 結論:値段を分けるのはブランドではなく「素材」
結論から言うと、1万円以下と2万円以上のラケットでは、使われている素材が根本的に異なります。
- 1万円以下(レジャー用): 主にアルミニウムで作られています。金属なので頑丈ですが、振動がダイレクトに腕に伝わります。
- 2万円以上(競技・スクール用): カーボンやグラファイト、特殊な振動減衰素材が使われています。これらは「軽くて強い」だけでなく、しなることでボールを飛ばし、不快な振動をカットしてくれます。
この素材の差が、そのまま「上達の速さ」と「怪我のしにくさ」に直結します。
2. 体験談:安いラケットと高いラケット、打ってみて驚いた3つのこと
実際に両方のラケットを持ち替えて打ってみると、数値上のスペックでは説明できない「感覚」の違いに驚かされます。
「バィーン」か「パシッ」か
数千円のアルミ製ラケットで打つと、打った瞬間に「バィーン」という嫌な残響が手首から肘まで突き抜けます。まるで金属のバットで硬い地面を叩いたような衝撃です。対して、3万円クラスのバボラ ピュアドライブのような最新ラケットは、ボールが面に吸い付いた後、狙った方向に「パシッ」と心地よく弾き出される感覚があります。
翌日の疲労がまるで違う
私はかつて、「ラケットなんてどれも一緒だろう」と安価なモデルを使い、週末の練習に明け暮れていました。しかし、1ヶ月も経たないうちに右肘に違和感(テニス肘)を覚え、翌朝ペンを持つのも辛い状況に。ところが、思い切って3万円台の高機能モデルに変えたところ、翌日の腕のダルさが嘘のように軽減されました。
「狙ったところに飛ぶ」という安心感
高いラケットは、面がブレにくい設計になっています。安いラケットだと、中心から少し外れて当たっただけでラケットが手の中でぐるりと回ってしまいますが、高品質なラケットはスイートスポットが広く、少々のミスショットもラケットがカバーしてくれます。この「ミスを道具が補填してくれる」という安心感が、初心者の上達を劇的に早めます。
3. レベル別・後悔しないための予算ガイド
自分に合った投資額を決めるための目安をまとめました。
年に数回のレジャー:〜10,000円
「公園で子どもと遊びたい」「年に一回、キャンプで使う」程度なら、この価格帯で十分です。ただし、テニススクールに通う予定があるなら、このクラスを買うのは少し待ってください。
これから本気で始める:20,000円〜28,000円
スクールに通ったり、部活動で使ったりするなら、この「ミドル〜ハイエンド」の入り口が最適解です。最新モデルではなく、1〜2年前の「型落ちモデル」を狙えば、ヨネックス イーゾーンなどの名作が1万円台後半で手に入ることもあります。
道具にこだわりたい・上級者:35,000円〜
プロ選手と同じスペックを求めるなら、この価格帯になります。素材の質は最高峰ですが、上級者向けラケットは「自分でボールを飛ばす力」が必要な場合もあり、初心者が使うと逆に難しく感じることもあります。
4. 賢く買うための「型落ち」戦略
最新のラケットは毎年あるいは隔年で新作が出ますが、実は劇的な進化を遂げることは稀です。
もし「3万円は高い……」と感じるなら、前作の在庫処分品を狙いましょう。性能差は体感で5%程度ですが、価格は40%オフになることも珍しくありません。特にウィルソン ウルトラシリーズなどは、新作発表のタイミングで旧作が大幅に値下がりするため、狙い目です。
5. まとめ:道具は「自分への投資」
テニスラケットの値段の差は、単なる見栄ではなく、あなたの「体への負担」と「上達までの時間」の対価です。
もしあなたが「これからテニスを趣味として楽しみたい」と考えているなら、最低でも2万円クラス(あるいはその型落ち品)を手に取ってみてください。初めてコートでボールを「パシッ」と捉えた瞬間のあの快感は、安価なラケットでは決して味わえない、テニスの真の醍醐味なのです。
まずはショップの試打ラケットや、スクールのレンタル品を使い比べてみてください。あなたの腕が、きっとその違いを教えてくれるはずです。
次は、具体的にどのメーカーのどのモデルを選べばいいか、初心者向けの定番ラケットを詳しく見ていきましょうか?


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