ウィンブルドンの真っ白なウェアに映える、鮮やかなグリーンの芝。テニスプレーヤーなら一度は「天然芝(グラスコート)」でのプレーに憧れるものですよね。しかし、いざコートに足を踏み入れると、その美しさとは裏腹に、驚くほどツルツルと滑る現実に直面します。
私は初めてグラスコートでプレーした際、手持ちのオールコート用シューズで挑み、派手に転倒して膝を擦りむきました。あの独特の「氷の上を走るような感覚」は、専用のギアなしでは攻略不可能です。今回は、日本では希少なグラスコートを安全に、そして全力で楽しむためのシューズ選びについて、私の実体験を交えて深く掘り下げます。
グラスコート専用シューズはなぜ「必須」なのか
「オムニコート(砂入り人工芝)用で代用できるのでは?」と考える方も多いですが、結論から言えばそれは非常に危険です。天然芝は水分を含みやすく、一歩目の踏み出しや急停止の際、ソールが芝を噛まないと全く踏ん張りがききません。
独特の「スタッド」が命
グラスコート専用シューズの最大の特徴は、アウトソールにびっしりと並んだ小さな突起(スタッド)です。これが芝の隙間に入り込み、地面を的確に捉えます。一方で、コートを傷めないよう突起の高さや硬さには厳格なルールがあり、これをクリアしていないシューズはそもそも使用を断られるケースもあります。
失敗しないための選び方と、私が信頼するモデル
日本国内ではグラスコート専用モデルの流通量は極めて少なく、手に入れること自体が最初のハードルになります。私が実際に試してきた中で、圧倒的な安心感があったモデルをいくつかご紹介します。
まず、日本人の足に馴染みやすく、グリップの安定感が抜群なのがアシックス プレステージライトのシリーズから稀に展開される限定モデルや、グラス対応の海外ラインです。特に中足部のサポートが強く、滑りやすい芝の上でも足首がグらつきにくいのが魅力です。
また、世界中のプロが愛用するウィルソン ラッシュプロのグラスコート版も外せません。このシューズは低重心設計になっており、芝特有の低いバウンドに対処するための「低い姿勢」を維持しやすいのが特徴です。
パワープレーヤーであれば、アディダス バリケードのグラスコート仕様も検討に値します。耐久性が高く、激しいフットワークでもソールが負けることがありません。
オムニコート用との決定的な違い
よく混同されますが、オムニコート用は「砂」を逃がしてグリップさせる構造です。対してグラス用は「芝」に刺してグリップさせます。
オムニ用のシューズで天然芝に入ると、芝をなぎ倒してしまいコートを傷めるだけでなく、ソールが芝の上を滑走してしまいます。逆に、グラス用をオムニコートで使うと、突起がすぐに削れてしまい、一瞬で寿命を迎えてしまうでしょう。それぞれのコートに適した「専用の武器」を持つことが、上達への近道であり、マナーでもあります。
購入時のアドバイス:どこで手に入れる?
グラスコート用シューズは、一般的なスポーツ量販店の店頭に並ぶことはまずありません。私はいつも、芝のシーズンが始まる前にオンラインショップやテニス専門店で予約をするか、海外サイトから直接取り寄せています。
サイズ選びについては、芝の上では通常よりも「踏ん張り」による足への負荷が大きいため、ジャストサイズかつホールド感の強いものを選ぶのがコツです。少しでも緩いと、靴の中で足が遊び、マメや捻挫の原因になります。
最高の1日を過ごすために
天然芝でのテニスは、ボールの滑るような低弾道や、イレギュラーバウンドへの対応など、他のコートでは味わえないスリルと楽しさに満ちています。
せっかくの貴重な機会を「滑って転んで終わり」にしないために。そして、繊細な芝を守る一人のプレーヤーとしての誇りを持つために。テニスシューズの中でも、最高の一足を選んでみてください。専用シューズが地面を掴む感覚を一度味わえば、あなたのフットワークはもっと自由になるはずです。


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