練習ではあんなに鋭いショットが打てるのに、いざ試合になるとコロッと負けてしまう。そんな経験はありませんか?私もかつてはそうでした。スクールの球出し練習では誰よりも綺麗なフォームで打ち、コーチからも「いいショットだ」と褒められる。しかし、いざ草トーナメントに出ると、フォームもバラバラでただ返してくるだけの「繋ぎの達人」に手も足も出ず負けてしまう。悔しくて、テニスラケットを新調すれば変わるかもと道具に頼ったこともありましたが、本質的な原因は技術ではなく「戦術」の欠如にありました。
テニスは、どれだけ速い球を打つかを競う100m走のような競技ではありません。相手よりも一回多く、相手が嫌がる場所へボールを落とす「確率と心理のスポーツ」です。今回は、私が格上の相手を倒せるようになった経験をもとに、明日から使える戦術の極意を公開します。
なぜ「戦術」を知るだけで勝率が変わるのか?
「上手い人」と「強い人」は決定的に違います。強い人は、自分のショットの威力を過信せず、常に「プレースメント(配球)」で勝負しています。かつての私は、チャンスボールが来れば力任せに打ち込み、ネットかアウトを繰り返していました。しかし、ある時気づいたのです。相手を倒すには、時速150kmの弾丸ショットは必要ありません。相手が最も嫌がるのは、自分の打ちにくい場所へ「しつこく」返ってくるボールなのです。テニスは加点方式ではなく、ミスを減らした方が勝つという「引き算のスポーツ」であることを理解した瞬間、私のテニスは変わり始めました。
鉄板戦術:クロスコートの魔法
実戦で最も効果を実感したのは「クロスコートを基本にする」という単純なルールです。
「そんなの基本中の基本だ」と思うかもしれませんが、徹底できている人は驚くほど少ないです。クロスコートは、ネットの中央(一番低い場所)を通り、対角線上に距離が長いため、ダウン・ザ・ラインに打つよりも圧倒的にミスが減ります。
実際に私が試した「体験的戦術」はこうです。「相手から厳しい球が来たら、迷わずクロス。甘い球が来ても、相手を追い出すまではクロス」と心に決めて試合に臨みました。すると、自分に心の余裕が生まれ、逆に焦った相手が無理をしてサイドアウトしてくれるようになったのです。この安心感を得るために、日々の練習でテニスボールをカゴいっぱいに使い、ひたすらクロスのターゲットを狙う練習を繰り返したことが、試合での自信に繋がりました。
実録:格上に勝てた時の「心の戦術」
ある大会で、自分より遥かに格上のベテラン選手と対戦した時のことです。彼のショットは決して速くありませんでしたが、とにかく深い。私は焦り、強引にエースを狙っては自滅するパターンに陥っていました。
そこで私は、戦術を1つに絞りました。**「全てのボールを相手のセンターに深く返す」**ことです。
センターに打つことで相手に角度をつけさせず、深さを出すことで相手をベースラインから下げさせました。派手なプレーは一切捨て、ただ黙々とセンターを突き続けました。すると、それまで涼しい顔をしていた相手が、次第にリズムを崩し、最後には苛立ちから簡単なミスを連発。結果、格上の相手から金星を挙げることができたのです。
「自分の最高の一打」を出すことに陶酔するのではなく、「相手の最低の一打」を引き出すこと。これがテニスにおける最高かつ最恐の戦術だと痛感した瞬間でした。
今日から意識を変えてコートに立とう
戦術とは、決して複雑なものではありません。「自分を助け、相手を困らせる選択」を続けるだけです。新しい技術を習得するには数ヶ月、数年かかりますが、戦術という「考え方」を変えるのは、次のポイントからでも可能です。
まずは、自分の試合をスマートフォンやビデオカメラで撮影してみてください。自分が思っている以上に、無謀なショット選択をしていることに驚くはずです。その客観的な視点こそが、あなたのテニスを劇的に進化させる第一歩になります。
技術を超えた「知略」のテニス。それを手に入れた時、あなたの目の前のコートは、今までとは違った景色に見えるはずです。


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