テニスのサーブで最も難しいのは、実はスイングではなく「トス」ではないでしょうか。私もかつては、トスが上がるたびに位置がバラバラで、自分のトスに振り回されてダブルフォールトを連発する日々を過ごしていました。練習では入るのに、試合のここぞという場面でトスが乱れるあの絶望感は、テニスプレイヤーなら誰もが経験する道です。
しかし、トスには明確な「物理的な正解」と、緊張しても崩れない「感覚的なコツ」が存在します。今回は、私が試行錯誤の末にたどり着いた、トスを劇的に安定させるための秘訣を余すことなくお伝えします。
なぜあなたのトスは安定しないのか?
トスが乱れる原因は、筋力不足ではなく「余計な動き」にあります。多くの人が陥りがちなのは、ボールを上に放り投げようとして、指先で弾いてしまうことです。
指先に力が入ると、ボールに不必要な回転がかかります。回転がかかったボールは空気抵抗を受けやすく、風が吹けば一瞬で軌道が変わってしまいます。また、肘や手首を「パチン」と使ってしまうと、関節の可動域が広い分、放り出す角度が毎回数ミリ単位でズレてしまい、結果として打点は数十センチも狂うことになるのです。
トスを安定させる3つの黄金ルール
私が多くのコーチから学び、自分の体で再現性が高いと確信したルールは以下の3点です。
1. 「コップを持つ」ように、指の付け根で支える
ボールを指先でつまむのではなく、手のひらと指の付け根あたりで「そっと置く」ように持ちます。イメージとしては、高級なワイングラスを割らないように持つ感覚、あるいは生卵を包み込むような柔らかさです。この持ち方に変えてから、指に引っかかって後ろに飛んでしまうミスが激減しました。
2. 肩を支点にした「エレベーター運動」
腕を一本の棒だと考えてください。肘や手首はロックし、肩だけを動かします。下から上へ、エレベーターが真っ直ぐ昇るように腕を運びます。このとき、ボールを離すのではなく、腕が上がっていく流れの中で「ボールが手から離れていく」のを待つのが理想的です。
3. リリースポインは「目の高さ」
ボールを離すタイミングが早すぎると前方へ、遅すぎると頭の後ろへ流れます。最も安定するのは、自分の視界の端に手が入る「目の高さ」で手を離すことです。ここでそっとボールを空間に置いてくるイメージを持つと、打点がピタッと止まるようになります。
実際に効果があった「地味だけど最強の練習法」
私がトスのイップスを克服するために毎日行った練習を紹介します。
一つ目は**「壁際トス」**です。壁のすぐ横に立ち、腕を上げたときに壁にぶつからないようにトスを上げます。これだけで、腕が外側に逃げる癖が一発で治ります。
二つ目は、自宅でもできる**「ターゲット落とし」**です。床にテニスラケットのカバーを置き、そこに向かってトスを上げ、そのまま手を動かさずにボールがカバーの上に落ちてくるかを確認します。これを1日10回繰り返すだけで、空間把握能力が飛躍的に高まります。
もし自分のフォームを客観的に見たいのであれば、三脚を使ってスマートフォンで真横から撮影してみてください。自分では真っ直ぐ上げているつもりでも、驚くほど腕がしなっていることに気づくはずです。
メンタルとリズムの重要性
試合中、トスが乱れるのは技術の問題以上に「リズムの乱れ」が原因です。私は、トスを上げる前に必ずボールを2回突き、深く息を吐くというルーティンを取り入れています。
また、トスを高く上げすぎていませんか?高く上げれば上げるほど、滞空時間が長くなり、風の影響やタイミングのズレが生じやすくなります。プロ選手でも、風が強い日はあえて低めのトスでクイック気味に打つことがあります。完璧な高さを求めるよりも「自分が一番気持ちよく振り抜ける最低限の高さ」を見つけることが、実戦での強さにつながります。
まとめ
トスはテニスの中で唯一、相手に邪魔されず自分のタイミングで行える動作です。だからこそ、突き詰めれば必ず「100%同じ場所」に上げられるようになります。
まずは今日から、ボールの持ち方を「指先」から「指の付け根」に変えてみてください。その小さな変化が、あなたのサーブを劇的に変える第一歩になるはずです。コートに立つのがもっと楽しくなる、そんな安定したトスを手に入れましょう。


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