お気に入りの一本をやっと手に入れ、最高の打球感に酔いしれる。テニスプレイヤーにとってこれほど幸せな瞬間はありません。しかし、その「最高の状態」は、実はあなたの保管方法ひとつで、砂時計のように刻一刻と失われているかもしれないのです。
「最近、なんだかボールが飛ばなくなった気がする」「ガットを張り替えたばかりなのに打球感がボヤける」……。そう感じているなら、原因は技術不足ではなく、ラケットの「保管環境」にある可能性が高いです。
今回は、テニス歴20年の私が実際に経験した失敗談を交えながら、愛機を長持ちさせるための黄金律を解説します。
【絶対NG】ラケットの命を奪う「やってはいけない」3つの保管
まず、これだけは絶対に避けてほしい保管方法からお伝えします。私自身、過去にこれで数万円をドブに捨てた経験があります。
1. 魔の「真夏の車内放置」
これは最もやってはいけない大罪です。真夏の車内は、JAFの実験でも60℃を超えることが証明されています。テニスラケットの主原料であるカーボン(炭素繊維)を固めている樹脂は、熱に非常に弱いです。
私は学生時代、遠征の合間に数時間車に放置しただけで、フレームが目に見えて歪んでしまったことがあります。一度歪んだフレームは、ガットを張り直しても二度と元の打球感には戻りません。
2. 湿気が溜まる「玄関・湿った倉庫」
「外で使うものだから」と玄関に置きっぱなしにしていませんか? 日本の湿気は強敵です。湿気はガットのテンションを急激に低下させ、特に天然素材のナチュラルガットを使っている場合は一晩で性能が死んでしまいます。また、グリップ内部にカビが発生し、不快な臭いの原因になることも少なくありません。
3. ガットが切れたままの放置
「後で張り替えに行けばいいや」と、ガットが切れたラケットを数日間そのままにしていませんか? ラケットには常に20kg〜30kg近い強烈な張力がかかっています。一本でも糸が切れると、そのバランスが崩れ、フレームに不均等なストレスがかかり続けます。これが「フレームのへたり」を早める最大の原因です。
プロも実践!テニスラケットに最適な保管場所と環境
では、どこに置くのが正解なのか。答えはシンプルです。**「人間が快適に過ごせる場所」**が、ラケットにとっても最高の環境です。
理想は「リビング」の風通しの良い場所
私は常に、除湿の効いたリビングの直射日光が当たらない場所に保管しています。温度変化が少なく、適度な湿度が保たれているため、ガットの劣化を最小限に抑えられます。
収納のひと工夫:壁掛けスタイルのススメ
床に直置きすると、倒れた衝撃でフレームに傷が入るリスクがあります。私は100均のネットや専用のフックを活用し、ディスプレイを兼ねて壁掛けにしています。これにより、通気性が確保され、出し入れもスムーズになります。
道具への愛が寿命を延ばす!「ひと手間」メンテナンス
練習が終わってバッグに放り込む前に、30秒だけ時間を割いてください。この積み重ねが数年後のラケットの状態を左右します。
- 水分と塩分の拭き取り: 手のひらの汗や、コート上の砂には塩分や不純物が含まれています。これを放置すると、グロメット(ガットを通す穴)の劣化を早めます。乾いた布でサッと拭くだけで十分です。
- グリップテープの管理: ウェットタイプ グリップテープは、汚れが目立つ前に交換しましょう。グリップが滑ると余計な握力が必要になり、結果としてスイングを乱すだけでなく、元グリップ(レザー部分)を腐食させる原因にもなります。
- 長期保管ならビニール袋を活用: しばらくプレーしない場合は、テニス用 除湿剤と一緒に大きなビニール袋に入れて密封するのも一つの手です。外気の影響をシャットアウトすることで、ガットの賞味期限を驚くほど延ばせます。
【体験談】ガットが切れたその瞬間、ハサミを入れろ!
最後に、ベテラン勢が必ずと言っていいほど守っている鉄則を紹介します。
練習中にガットが切れたら、その場ですぐにテニス用ハサミを使って、すべてのガットを縦横十字に切ってください。
「もったいない」と思うかもしれませんが、切れたまま放置してフレームが歪むリスクに比べれば、ガット代なんて安いものです。私は常にラケットバッグのサイドポケットに小さなハサミを忍ばせています。
まとめ:正しい保管は最高のプレーへの最短距離
テニスラケットは精密機器です。丁寧に保管されたラケットは、コート上であなたの意図した通りの弾道を描いてくれます。
- 車内や高温多湿な場所を避ける
- 人間と同じ快適な部屋で休ませる
- 切れたガットはすぐに全カットする
この3点を守るだけで、あなたの愛機はもっと長く、もっと力強く、あなたのプレーを支えてくれるはずです。さあ、今すぐ玄関にあるラケットバッグを、リビングの風通しの良い場所へ移動させてあげましょう。


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