「なぜ野球の練習にテニスラケットを使うのか?」
一昔前なら、グラウンドでラケットを握る姿は奇妙に映ったかもしれません。しかし今や、プロ野球のキャンプ地や強豪の少年野球チームにおいて、テニスラケットはバットに次ぐ必須アイテムとなりつつあります。
私自身、長年少年野球の指導に携わってきましたが、初めてラケットを練習に取り入れた日の衝撃は忘れられません。今回は、実際に体験して分かった「ラケット×野球」の驚くべき相乗効果と、具体的な活用法を深掘りします。
インパクトの「面」を100%意識するバッティング練習
バットは円柱形です。そのため、多少なりとも「芯」を外してもボールは飛んでいってしまいます。これが、実は初心者が「こねる」癖をつけやすい原因でもあります。
一方、テニスラケットは明確な「平面」です。
「こねる癖」が1日で改善した体験談
チームに、どうしても手首を返してサードゴロばかり打ってしまう中学1年生の選手がいました。「脇を締めろ」「押し込め」と言葉で伝えても、バットの軌道は目に見えにくいため、本人も改善の糸口を掴めずにいたのです。
そこで導入したのが、椅子に座った状態でのテニスボール打ちでした。
ラケットを持たせると、インパクトの瞬間に「面」がどこを向いているかが一目瞭然になります。彼に「手のひらでボールを押し運ぶイメージで」と伝えたところ、わずか数スイングで、ラケットの面が真っ直ぐピッチャー方向を向くようになりました。
その後バットに持ち替えさせると、これまで見たこともないようなセンターへの鋭いライナーを連発。「面で捉える感覚が初めてわかった」という彼の言葉は、ラケット練習の有効性を物語っていました。
守備練習(ノック):指導者の負担を劇的に減らす
野球の指導において、最も体力を消耗するのが「ノック」です。特に外野フライを上げるのは、未経験の保護者や女性指導者にとっては至難の業。ここでテニスラケットが救世主となります。
ノック用バットを置いた日
かつての私は、100本、200本とノックを打つうちに肩や肘を痛めることが多々ありました。しかし、ラケットを使い始めてから世界が変わりました。
- 驚きの操作性: 硬式テニスラケットを使えば、軽い力で驚くほど高く、正確なフライが上がります。
- 変化球ノック: スライスをかければ、実際の試合で起こりうる「切れていく打球」も自由自在に再現可能です。
ただし、注意点が一つ。軟式野球ボールを本気で打ち続けるとガットがすぐに切れてしまいます。長く使うなら、中古のラケットを安く手に入れるか、あるいは野球練習用に設計されたフィールドフォース ノックラケットのような専用品を導入するのが賢明です。
野球経験者がテニスに転向する際の「メリットと落とし穴」
この記事を読んでいる方の中には、野球を引退してテニスを始めようとしている方もいるでしょう。
身体能力は最強、でも「引き算」が必要
野球経験者は、肩の強さと下半身の粘りがあるため、サーブやスマッシュにおいて圧倒的なアドバンテージを持っています。しかし、ここでも「面」の意識が壁となります。
ある元球児の友人は、テニスを始めた当初「全部ホームラン(バックアウト)」にしていました。バットを振る感覚でフルスイングしてしまうからです。彼は「テニスは野球のスイングからパワーを50%引き算し、代わりに面の角度を1度単位で調整するスポーツだ」と語りました。この「引き算」の感覚を掴んだ途端、彼はわずか半年で経験者を凌駕する上達を見せました。
まとめ:道具を変えれば、野球の視界はパッと開ける
テニスラケットは、単なる遊び道具ではありません。野球というスポーツを「点」ではなく「面」で捉え直すための、最高のアシストツールです。
- バッティングの「こねる癖」を治したい。
- ノックをもっと正確に、楽に打ちたい。
- 選手に新しい刺激を与えたい。
もしあなたがそう感じているなら、物置に眠っている古いラケットをグラウンドに持ち出してみてください。その一振りが、チームのバッティングを劇的に変えるかもしれません。
次の一手として、まずは中古のテニスラケットを探すか、チームで1本ノック専用ラケットを導入してみるのはいかがでしょうか?


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