テニスを続けていると、誰もが一度は「あと数センチ、ラケットが長ければ届いたのに……」という悔しい思いを経験するものです。その「あと少し」を物理的に解決してくれるのが、標準の27インチより長い「ロングラケット(長尺ラケット)」です。
しかし、たった0.5インチ(1.27cm)の差と侮ってはいけません。実際に手に取ってみると、それは全く別物の「武器」へと進化します。今回は、ロングラケットを愛用して見えたリアルな体験談をもとに、その魅力と注意点を深掘りします。
0.5インチが変えるテニスの世界:なぜプロは長尺を選ぶのか?
日本の至宝、錦織圭選手が長年愛用していることで知られるロングラケット。彼がウルトラ 95JPのような長尺モデルを使い続ける理由は、体格差をカバーし、パワー負けしないためです。
数学的に言えば、$0.5 \text{インチ} \approx 1.27 \text{cm}$。しかし、スイング時の遠心力(テコの原理)は長さに比例して増幅されるため、ボールに伝わるエネルギーは数値以上に跳ね上がります。
【体験談】ロングラケットに変えて感じた「3つの劇的変化」
私が標準サイズからバボラ ピュアドライブ +に持ち替えたとき、最初に感じたのは「違和感」ではなく「圧倒的な恩恵」でした。
1. サーブの威力が別次元になる
まず驚いたのはサーブです。打点がわずかに高くなるだけで、ネットを越す確率が格段に上がります。
「今までならネットしていた低い弾道のスライスサーブが、相手のバック側に突き刺さる」。
軽い力で振ってもラケットヘッドが走るため、サービスエースの数が増えたのは嬉しい誤算でした。
2. 守備範囲の「心理的」な余裕
ダブルスのポーチや、左右に振られたシングルスの展開で、「届かない」と諦めていたボールにラケットが引っかかります。
「あと1cm」の物理的なリーチ以上に、「これなら届く」という心理的な余裕が、フットワークの最初の一歩を軽くしてくれました。
3. ベースライン際で「もうひと伸び」する重い球
ストロークでは、ボールの推進力が変わります。自分ではいつも通り合わせているつもりでも、相手からは「球が深くて押し込まれる」と言われるようになりました。特にヨネックス イーゾーン 100+のようなモデルは、パワーのあるしなりと長さが相まって、エグいほど伸びる打球を放てます。
知っておくべき「長尺の代償」と克服のコツ
良いことばかりではありません。ロングラケットには独特の「癖」があります。
- ボディへの対応が難しい: 懐(ふところ)に入られたとき、ラケットが長い分、取り回しが窮屈になります。「肘を抜く」ような独特の捌きが必要で、慣れるまでは差し込まれる場面が増えるかもしれません。
- 操作性(スイングウェイト)の重さ: 物理的な重量が同じでも、長い分だけ「振った時の重さ」は増します。試合の後半、腕が疲れてくると振り遅れやすくなるため、ダンロップ FX500 TOURのように、元々操作性の良いベースモデルを選ぶのが賢明です。
27インチと27.5インチ、どっちを選ぶべき?
| 項目 | 27インチ(標準) | 27.25〜27.5インチ(ロング) |
| 主な対象 | オールラウンダー、ボレーヤー | ストローカー、サーブ重視派 |
| 操作性 | 非常に高い。取り回しが良い | 慣れが必要。遠心力は大きい |
| パワー | 自分の筋力に依存する | ラケットの長さが助けてくれる |
| 疲労度 | 少ない | 腕への負担はやや増える |
失敗しないための「移行術」
もしあなたがロングラケットに挑戦するなら、以下の3点を意識してください。
- ラケット自体の重量を落とす: 27インチで300gを使っているなら、ロングでは285g〜290g程度のものを選ぶと、スイングウェイトのバランスがちょうど良くなります。
- グリップを少し短めに握る: 操作性に不安がある場面(ボレーなど)では、あえてグリップを短く握ることで、一時的に標準サイズと同じ感覚で扱えます。
- ストリングは少し硬めに: ラケットが飛ぶようになる分、コントロールを維持するためにルキシロン 4Gなどのポリエステルガットで調整するのがおすすめです。
まとめ:ロングラケットはあなたの「武器」になる
ロングラケットは、決して「楽をするための道具」ではなく、自分の限界を物理的に拡張するための「戦略的な武器」です。
最初はその長さに戸惑うかもしれませんが、一度「長尺ならではの爆発力」を体験してしまうと、もう27インチには戻れない中毒性があります。まずは試打ラケットで、サーブを一本打ってみてください。その瞬間に、あなたのプレースタイルが進化する予感を感じるはずです。
次は、あなたのプレースタイルに合わせて、具体的におすすめのロングラケットを3つ厳選してご紹介しましょうか?


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