ロシニョール・テニスラケットの伝説|名器F200の打球感とビランデルが愛した“しなり”を徹底レビュー

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1980年代、テニスコートで異彩を放っていた「逆アーチ型」のラケットを覚えているでしょうか。スキーメーカーとして名高いロシニョールが、かつてテニス界に革命を起こした時代がありました。マッツ・ビランデルが全仏オープンで頂点に立ったその手に握られていたのは、他でもない ロシニョール F200 でした。

今、あえて現代のカーボンラケットを置き去りにしてでも語りたい、ロシニョールの魅力とその唯一無二の体験について深掘りします。


1. 「しなり」がボールを掴む。ロシニョールにしか出せない魔球

現代のテニスラケットは、反発性能を高めるためにフレームを硬くし、パワーで押し切る設計が主流です。しかし、ロシニョールの代名詞である F200 カーボン は、その真逆を行く存在でした。

実際にこのラケットを振ってみると、まずその「柔らかさ」に驚かされます。インパクトの瞬間、フレーム全体がグニャリとしなる感覚。まるでラケットがボールを一度飲み込み、そこからゆっくりと、しかし強烈な回転を伴って吐き出すような感覚です。

このホールド感こそが、ビランデルが得意とした「ムーンボール」の源泉でした。現代の バボラ ピュアドライブ などの黄金スペックでは味わえない、まさに「糸を引くようなコントロール」が可能になるのです。

2. 伝説の「インバーテッド・ブリッジ」がもたらす安心感

ロシニョールの外見上の最大の特徴は、ヨーク部分(V字の部分)が逆にカーブしている「インバーテッド・ブリッジ」です。

  • スイートスポットの広さ: 縦糸の長さが均一に近づくため、オフセンターで捉えても手に伝わる不快な振動が極めて少ないのが特徴です。
  • 打球音: パキーンという硬い音ではなく、ボフッという湿り気のある重厚な音が、プレーヤーの所有欲を刺激します。

私がかつて ロシニョール ストラト からカーボンモデルへ移行した際、最も感動したのはその「体への優しさ」でした。振動吸収性が高いため、テニス肘に悩んでいた当時の友人たちが、こぞってロシニョールを買い求めていた光景を今でも鮮明に覚えています。

3. 体験談:現代テニスでロシニョールを使うという贅沢

もしあなたが、中古市場で運よく状態の良い ロシニョール テニスラケット を見つけたら、ぜひ一度コートで試してほしいと思います。

現代のポリエステルガットを張り、今の高速テニスで打ち合ってみると、確かに「パワー不足」を感じるかもしれません。相手の速い球に差し込まれた際、フレームのしなりが仇となって面がブレる感覚もあります。

しかし、自分のスイングでボールを操る感覚、つまり「道具に使われるのではなく、道具を使いこなす楽しさ」は、最新の ヨネックス パーセプトウィルソン クラッシュ でも完全には再現しきれないロシニョールだけの特権です。ドロップショットを放った時の指先に伝わる繊細なタッチは、まさに芸術の域。

4. 今、ロシニョールを手に入れるということ

残念ながら、ロシニョールは現在テニスラケットの製造を行っていません。そのため、手に入れるにはオークションや中古専門店を根気強く探す必要があります。

購入時の注意点としては、以下の3点に注目してください。

  1. フレームの亀裂: 特にインバーテッド・ブリッジの接合部は経年劣化が出やすい場所です。
  2. グロメットの状態: 替えのパーツがほぼ存在しないため、グロメットがボロボロのものは避けたほうが無難です。
  3. グリップの加水分解: 中のウレタンが崩れている場合がありますが、これは リプレイスメントグリップ で交換可能です。

まとめ

ロシニョールのテニスラケットは、単なる懐古趣味のアイテムではありません。それは、テニスというスポーツが「技術と感覚の融合」であった時代の結晶です。

もし、あなたが今のラケットの硬さに疲れ、ボールを「操る」喜びを取り戻したいと願うなら、あの小豆色のフレームを探す旅に出る価値は十分にあるはずです。かつての王者たちが愛したその「しなり」は、現代のコートでも、きっとあなたに新しいテニスの景色を見せてくれるでしょう。

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