テニスコートで力いっぱいスイングした瞬間、あるいは不注意で地面にぶつけてしまった時。「パキッ」という嫌な音とともに愛用のラケットにヒビが入る絶望感は、テニスプレーヤーなら誰もが経験したくない瞬間です。
「まだ買ったばかりなのに」「このモデルはもう廃盤で手に入らない」と頭を抱えているあなたへ。その割れ、諦める前にこの記事を読んでください。実体験に基づいたDIY補修の限界から、プロのカーボン修理の驚くべき精度まで、後悔しないための選択肢をすべて公開します。
1. そのヒビ、本当に修理が必要?寿命か補修かの判断基準
まず、その傷が「プレーに影響する致命的なもの」か「単なる見た目の問題」かを見極める必要があります。
- レベル1:塗装の剥げ・小さな欠けこれは「傷」であって「割れ」ではありません。カーボン層まで達していなければ、マニキュアやタッチアップペンで色を塗るだけで十分です。
- レベル2:表面の細い線(ヘアライン)髪の毛のような細い線。これが塗装だけに留まっているのか、カーボンまで裂けているのかの判断は、爪で軽く弾いた時の「音」でわかります。濁った音がしなければ、まだ戦えます。
- レベル3:フレームを貫通する亀裂・陥没ガットの張力に耐えられず、放置するとフレームが変形します。自力での完全修復は不可能です。
- レベル4:打球時の異音・グニャッとする感覚フレーム内部の構造が破壊されています。残念ながら「寿命」と判断し、新しい相棒を探す時期かもしれません。
2. 【DIY体験談】自分で直してみた!1,000円以下でできる応急処置
「とりあえず、これ以上ひどくならないようにしたい」という一心で、私もかつてDIY補修に挑んだことがあります。ホームセンターで手に入る道具で、意外と見た目は整います。
準備するもの
修理のステップ
- 脱脂: 修理箇所の汚れを拭き取ります。
- 流し込み: ヒビの隙間に瞬間接着剤を慎重に流し込みます。ここで重曹を振りかけると、化学反応で一瞬で岩のように硬くなります。
- サンディング: 盛り上がった部分を耐水ペーパーで削り、フレームのカーブと一体化させます。
- 仕上げ: 車用のコンパウンドで磨き、最後に色を塗れば、遠目には全くわからなくなります。
体験者からのアドバイス:
見た目は綺麗になりますが、強度が100%戻るわけではありません。高いテンションでガットを張ると、修理箇所から再び「ピシッ」といくリスクがあることは覚悟しておきましょう。
3. プロの「カーボン補修」に依頼した場合のリアルな実態
「お守り」としてのラケットではなく、本気で試合で使いたいなら専門店一択です。プロは折れた箇所に本物のカーボンシートを巻き付け、釜で焼き固める工程を踏みます。
- 修理費用: 1箇所につき5,000円〜10,000円が相場です。これに往復の送料と、張り替え用のガット代がかかります。
- 納期: 混み具合によりますが、2週間から1ヶ月程度。
- 強度の復活: 驚くことに、修理箇所は「元のフレームより強く」なることすらあります。
修理後の「打球感」はどう変わる?
ここが一番気になるポイントですよね。実際にプロに直してもらったラケットを打った感想は、**「わずかに硬くなる」**です。
修理箇所にカーボンを上巻きするため、その部分のしなりが減り、重量も3g〜5gほど増えます。繊細な感覚を持つプレーヤーなら「スイングウェイトが変わった」と感じるはずです。
4. 割れを未然に防ぐために。今すぐできる3つの対策
ラケットが割れてから後悔する前に、日頃のメンテナンスを見直しましょう。
- エッジガードテープを貼る: フレームのトップ部分は、地面と擦れてどんどん薄くなります。1,000円弱の投資で寿命が倍に伸びます。
- 真夏の車内に放置しない: カーボンの接着樹脂は熱に弱いです。猛暑の車内に放置すると、強度が著しく低下します。
- ガットの適正テンションを守る: フレームが弱っているところに、無理な高テンションで張るのは自殺行為です。
5. まとめ:直すべきか、買い替えるべきか
最終的な判断基準はこれです。
- 修理すべき: 廃盤でもう買えない、思い出が詰まっている、練習用のサブ機として使いたい。
- 買い替えるべき: 現行モデルを安く買える、試合で100%のパフォーマンスを出したい、重さやバランスの変化が許せない。
ラケットはプレーヤーの腕の延長です。修理して使い続けるにせよ、新調するにせよ、納得のいく形でコートに戻れることを願っています。
次は、修理したラケットに最適な「衝撃吸収性の高いガット」の選び方について、詳しくお伝えしましょうか?


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