日本の神戸から世界へ。今やニューヨークの街角でもパリのランニングコースでも、あのアシックスストライプを見ない日はありません。かつては「真面目な競技用シューズ」というイメージが強かった同社ですが、現在の変貌ぶりには目を見張るものがあります。
私は長年、国内外のスポーツビジネスを定点観測してきましたが、近年のアシックスの躍進は単なるブームではなく、徹底した「科学」と「ブランドの再定義」がもたらした必然の結果だと確信しています。
独自の「スポーツ工学」が生む圧倒的な信頼
アシックスを語る上で外せないのが、神戸にあるスポーツ工学研究所です。ここでは人間の動きを徹底的に分析し、ミリ単位で素材や形状を最適化しています。
例えば、長距離ランナーの足元を支えるゲルカヤノシリーズ。私も実際にフルマラソンで使用したことがありますが、後半の疲労が溜まった時間帯に、土踏まずの落ち込みを防いでくれる安定感には何度も救われました。この「最後まで走りきれる」という安心感こそが、世界中の市民ランナーから絶大な支持を得ている理由です。
また、最新のカーボンプレート搭載モデルメタスピードの登場により、エリートランナーの間でも「アシックス回帰」が起きています。トップアスリートが記録を狙うための相棒として、再び日本ブランドが選ばれている現状は、一人のファンとして非常に感慨深いものがあります。
「オニツカタイガー」から「スポーツスタイル」への昇華
ビジネス面での成功を支えているもう一つの柱が、ライフスタイルカテゴリーの強化です。オニツカタイガーが欧州のファッショニスタの間で定番化したのは有名ですが、最近ではゲルクォンタムなどのハイテク系モデルが、感度の高い若年層のストリートシーンを席巻しています。
かつての「体育館履き」というイメージを逆手に取り、レトロさと最新技術を融合させたデザイン戦略は、現在のトレンドに見事に合致しています。これにより、競技者だけでなく日常的にファッションを楽しむ層へも顧客基盤が大きく広がりました。
デジタルとサステナビリティ:100年企業への布石
現在の経営戦略において、アシックスは単なる「モノ売り」からの脱却を図っています。ランニングアプリの提供やレース登録プラットフォームの買収など、デジタルを通じてユーザーの健康寿命を延ばす「コト消費」へのシフトを鮮明にしています。
さらに、環境への配慮も抜かりありません。循環型シューズとして発表されたゲルカヤノ 31をはじめ、素材の調達から廃棄に至るまで、サステナビリティを経営の根幹に据えています。これは、創業者の鬼塚喜八郎氏が掲げた「健全な身体に健全な精神があれ」という哲学を、現代の地球環境に合わせてアップデートした姿と言えるでしょう。
結論:なぜ今、アシックスなのか
投資家やビジネスマンの視点で見ても、現在の同社は非常にバランスの取れた成長を遂げています。北米市場でのブランド再構築、中国市場でのシェア拡大、そして高付加価値モデルへの集中投資。これらが実を結び、過去最高の業績を更新し続けています。
日本発のグローバル企業として、技術への誠実さを失わずに進化し続ける姿勢。アシックス ランニングシューズを一足手に取れば、その作り込みの深さに、彼らが描く未来の景色が透けて見えるはずです。


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