「もう少しサーブに威力が欲しい」「あと数センチ、ボールに届いていれば……」
テニスを続けていると、自分の技術の限界を道具で補いたくなる瞬間がありますよね。そんな時、真っ先に候補に挙がるのがラケットの「長さ」の変更です。
一般的にテニスラケットは27インチが標準ですが、世の中には「長ラケ(ロングラケット)」と呼ばれるモデルが存在します。私自身、標準サイズから0.5インチ長いモデルに切り替えて1年以上プレーした経験がありますが、そこにはカタログスペックだけでは見えてこない、劇的な変化と「使い手を選ぶ罠」が隠されていました。
今回は、ラケットの長さがプレーにどう影響するのか、私の実体験を交えて深掘りしていきます。
そもそも「0.5インチ」の差で何が変わるのか?
テニスにおける0.5インチは約1.27cm。指の第一関節分にも満たないわずかな差ですが、ラケットの先端でこの差が生じると、物理的な挙動は驚くほど変わります。
1. サーブの「景色」が変わる
長ラケを手にして最初に感動したのがサーブです。たった1cm強打点が上がるだけで、ネットの上を通る際の「クリアランス(余裕)」が視覚的に広がります。
「テコの原理」がより強く働くため、軽く振ってもボールに力が伝わりやすく、特にフラットサーブの突き刺さるようなスピード感は標準モデルでは味わえない快感でした。
2. ダブルハンドの「窮屈さ」からの解放
これは意外なメリットでしたが、長ラケの多くはグリップ部分も長く設計されています。
私は手が大きい方なので、標準サイズの Pure Drive などを使うと、左手の小指がグリップエンドからはみ出しそうになることがありました。長ラケ仕様の Pure Drive + に変えたところ、両手でしっかりと握り込めるスペースが生まれ、バックハンドの安定感が劇的に向上したのです。
3. 「あと一歩」を救うリーチ
シングルスの試合で左右に振られた際、スライスで必死に食らいつく場面。
「あ、今の届いた!」というシーンが確実に増えました。物理的に届く範囲が広がるだけでなく、「少し長いから届くはずだ」という心理的な余裕が、最後まで足を動かすモチベーションに繋がるのです。
実際に使ってわかった「長ラケの罠」
メリットばかりに目が向きがちですが、長ラケには慣れが必要なポイントも確実に存在します。
操作性の低下と「詰まり」
ラケットが長くなるということは、それだけ振り抜きの重さ(スイングウェイト)が増すということです。
特にネットプレーにおいて、正面に来たボレーを捌く際、標準サイズと同じ感覚でラケットをセットしようとすると、フレームが体に近すぎて「詰まる」感覚がありました。近距離の反応が求められるダブルスプレイヤーにとっては、このわずかな操作性の遅れが致命的になることもあります。
試合後半に襲ってくる「重み」
練習の最初の30分は魔法のようにボールが飛びますが、試合の後半、疲れが見え始めた頃に長ラケの「重さ」が牙を剥きます。
EZONE 100+ のようなパワーのあるモデルでも、自身のスイングが鈍くなると、長くなった分の遠心力を制御しきれず、振り遅れが目立つようになりました。自分の体力を過信せず、重さと長さのバランスを見極めるのが重要です。
あなたはどっちを選ぶべき?
結局のところ、長さの選択は「何を優先し、何を捨てるか」という決断です。
- 長ラケを試すべき人:
- サーブを最大の武器にして、フリーポイントを増やしたい。
- 体格が小柄で、リーチやパワーを道具で補いたい。
- ベースライン付近でのストローク戦が主体。
- 標準(27インチ)を維持すべき人:
- ネットプレーが多く、ラケットの操作性を最優先したい。
- すでに肘や肩に不安があり、スイングウェイトを上げたくない。
- 振り抜きの良さを活かして、スピンを多用したい。
Wilson Ultra 100 のような標準的なモデルから、あえて YONEX EZONE シリーズの延長モデルに踏み出すのは勇気がいりますが、その一歩があなたのテニスを劇的に変える可能性を秘めています。
もし迷っているなら、まずはスクールやショップで試打をしてみてください。その際、ストロークだけでなく「ボレー」と「試合後半を想定したサーブ」を念入りにチェックすることをおすすめします。
ラケットの長さという「物理的な進化」を味方につけて、理想のプレーを手に入れましょう。


コメント