「800mは陸上の格闘技だ」——。スタート直後の位置取り、バックストレートでの駆け引き、そしてラスト100mで足が鉛のように重くなるあの感覚。私自身、長年トラックを走り続けてきましたが、800mほどシューズ選びが勝敗、そして「走り切れるかどうか」の恐怖心に直結する種目はないと感じています。
近年、中距離界の足元は劇的に進化しました。かつての「薄底・素足感覚」が正義だった時代から、現在は反発とクッションをいかに高い次元で両立させるかのフェーズに突入しています。特に日本人の足を知り尽くしたアシックスのラインナップは、海外メーカーに比べてカカトのフィット感が絶妙で、激しいコーナーリングでも力が逃げない安心感があります。
まず、エリートランナーや「本気で1分50秒台、2分一桁を狙いたい」という方に避けて通れないのがMETASPEED MDです。初めてこれを履いてポイント練習をした時、カーブを抜ける際の「勝手に足が前に出る感覚」に驚きました。カーボンプレートがもたらす強烈な推進力は、後半の粘りが課題の選手にとって強力な武器になります。ただし、かなり脚力を消耗するため、相応のトレーニングは必須です。
一方で、学生ランナーや1500mとの兼ね合いを重視するならGUN LAP 2の安定感は見逃せません。私自身、連戦が続く夏の大会では、あえてこのモデルを選びます。接地感がマイルドで、ラストスパートでも足首が負けにくい。障害物レースにも対応しているだけあって、タフな作りが魅力です。
まだ競技を始めたばかりの方や、練習用と割り切るならHYPER MD 8が最適解でしょう。クッション性が高く、ハードなインターバルでも故障のリスクを軽減してくれます。
スパイク選びで大切なのは、スペック以上に「自分のピッチとストライドが、そのシューズの反発リズムと合うか」です。店舗で足を通す際は、必ず前足部でグッと地面を押し込む動作をしてみてください。その一歩の感覚が、ラストの直線であなたを支えてくれるはずです。
最高の相棒となる一足を見つけ、トラックで最高の景色を楽しみましょう。


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