モータースポーツ、特にジムカーナの世界に足を踏み入れた人なら、一度はその名を耳にする伝説的なタイヤがあります。それがダンロップのDIREZZA 98Jです。最新のハイグリップラジアルが次々と登場する中で、なぜ今なおベテラン勢から「指名買い」されるのか。私自身、ステアリングを握り、パイロンの林を駆け抜ける中で感じた「98Jにしか出せない味」を交えて、その真価を深掘りします。
競技の現場で「98J」が選ばれ続ける理由
初めてサーキットやジムカーナコースを走った時、多くの人はタイヤの「タレ」に悩まされます。しかし、DIREZZA 98Jを装着してコースインした瞬間、そのダイレクトな接地感に驚くはずです。
このタイヤの最大の武器は、絶対的なドライグリップと、ドライバーの意図を寸分違わず路面に伝える「剛性感」にあります。ステアリングを切った分だけ鼻先が入り、アクセルを開ければ路面を蹴り出す。このリニアな反応こそ、1000分の1秒を争う競技において、サンデーレーサーからトップランカーまでを虜にする理由です。
コンパウンド選びで勝負が決まる
DIREZZA 98Jを語る上で外せないのが、コンパウンドの選択です。主に以下の2種類が、勝敗を分ける鍵となります。
- Sコンパウンド(ソフト): 朝一の冷え切った路面や、超短距離のジムカーナコースで威力を発揮します。走り出しの一歩目から強烈な粘りを見せますが、夏場の高温下では熱が入りすぎる「オーバーヒート」に注意が必要です。
- Mコンパウンド(ミディアム): 連続走行を行うミニサーキットや、路面温度が高い午後のセクターで真価を発揮します。安定したグリップを長く維持できるため、練習走行から本番まで幅広くカバーしてくれます。
天候や路面状況を読み、「今日はSか、それともMか」と悩む時間は、モータースポーツの醍醐味の一つと言えるでしょう。
サイズ展開と「後継モデル」への移行
残念ながら、DIREZZA 98Jは現在、185/55R14などの特定のサイズに限定されたラインナップとなっています。多くのサイズは後継のDIREZZA 03Gや、よりストリート寄りのDIREZZA ZIIIへと引き継がれました。
もし、あなたが愛車に適合するDIREZZA 98Jを見つけられたなら、それは幸運です。特に軽量なハッチバック車との相性は抜群で、タイヤの「ヨレ」を感じさせないシャープなコーナリングを約束してくれます。
一方で、サイズが見つからない場合はDIREZZA 03Gへの移行を検討しましょう。98JのDNAを受け継ぎつつ、最新のコンパウンド技術によってウェット性能や耐摩耗性が進化しています。「あの頃の98Jの感覚」を最新技術で再現できるはずです。
最後に:98Jが教えてくれること
ダンロップのDIREZZA 98Jは、単なる消耗品としてのタイヤではありません。路面の状況を読み、車の限界を探り、そしてドライバーとしての腕を磨くための「最高の教材」です。
タイヤを路面に叩きつけ、スキール音と共にコーナーを駆け抜ける。その一瞬の快感を知ってしまったら、もう普通のラジアルタイヤには戻れません。もし、あなたの挑戦したいステージにDIREZZA 98Jがあるのなら、ぜひその圧倒的なグリップ力を体感してみてください。勝利の女神は、路面を掴んで離さないその4本に微笑むはずです。


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