「今、なんて言ったの?」
テニスコートに初めて立った日、あるいはテレビでグランドスラムを観戦し始めた時、誰もが一度は感じる戸惑いです。「ラブ」が0を指し、いきなり「デュース」や「タイブレーク」といった呪文のような言葉が飛び交う世界。しかし、この独特な言葉の背景を知るだけで、テニスは一気に身近なものへと変わります。
私がテニスを始めた頃、スコアの数え方を間違えてペアに苦笑いされた苦い経験があります。でも、その失敗があったからこそ、用語の一つひとつに込められた意味や、プレイを円滑にするための「暗黙のルール」の大切さが身に染みました。この記事では、単なる辞書的な解説にとどまらず、実際のコートで恥をかかないためのコツや、プロの試合がより熱く見えるポイントを私の実体験を交えてお伝えします。
1. 独特なカウントの謎を解く:スコアと進行の用語
テニスのスコアは世界共通ですが、初心者にとって最初の壁は「0(ゼロ)」を「ラブ」と呼ぶことでしょう。一説にはフランス語で卵を意味する「l’oeuf(ルッフ)」が由来と言われていますが、コート上で「ラブ・オール!」とコールする瞬間の、あの背筋が伸びるような独特の緊張感はテニスならではの魅力です。
- デュースとアドバンテージ40-40(フォーティ・オール)になった際、2ポイント差がつくまで続く泥沼の戦い。私は以前、真夏の試合でデュースが10回以上続き、意識が朦朧としたことがあります。その時、足の負担を軽減してくれたテニスシューズのクッション性には本当に救われました。
- タイブレークセットカウントが6-6になった際に行われる「最終決戦」です。ここでは1ポイントの重みが通常の3倍くらいに感じられます。心臓の鼓動が耳に響くようなあのプレッシャー、それを乗り越えて勝利した時の爽快感は、何物にも代えがたい体験です。
2. プレイを彩るテクニック:ショットと回転の用語
テニスは物理のスポーツです。ボールにどのような回転(スピン)をかけるかで、軌道は劇的に変わります。
- トップスピンとスライスボールの上を擦り上げるトップスピンは、ベースライン際で急激に沈みます。逆にスライスは、低く滑るような弾道になります。私が初めてスライスのコツを掴んだのは、テニスラケットの面を少し寝かせて、包丁で野菜を切るようなイメージで振った時でした。それ以来、守備の場面でも「時間を稼ぐ」という戦略的な使い方ができるようになりました。
- ドロップショットの魔力相手を後ろに下げさせておき、ネット際にポトンと落とす。成功すれば最高に気持ちいいですが、失敗してネットにかかると、相手に申し訳ないような、自分に腹が立つような複雑な気分になります。でも、こうした駆け引きこそがテニスの醍醐味です。
3. コート上の「暗黙の了解」:マナーとセルフジャッジ
テニスは「紳士・淑女のスポーツ」と言われる通り、マナーが技術以上に重視されることがあります。
- セルフジャッジの潔さ審判のいない一般の試合では、自分のコートに入ったボールは自分で判定します。ラインに乗ったかどうかの微妙な判定。私は「迷ったら相手に有利に(インにする)」という先輩の教えを大切にしています。一時の1ポイントよりも、互いに気持ちよくプレイできる空気感の方が、その後の上達に繋がるからです。
- フットフォールトに注意サーブを打つ瞬間にラインを踏んでしまう反則。自分では気づきにくいので、スマホや三脚を使って自分のフォームを録画してチェックするのが上達の近道です。客観的に自分の姿を見ると、意外な癖に驚くはずです。
4. プロの視点を取り入れる:観戦が楽しくなる用語
テレビの中のトッププレイヤーたちがなぜあんなに強いのか。用語を知るとその理由が見えてきます。
- アンフォーストエラー(凡ミス)相手のショットが良いわけではないのに、自分でミスをしてしまうこと。プロの試合では、いかにこのエラーを減らし、「ウィナー(決定打)」を決めるかのスタッツ(統計)が勝敗の鍵を握ります。
- ブレークポイントの重圧レシーブ側がそのゲームを取れば勝ちという局面。プロでも手が震えると言われるこの瞬間、お気に入りのスポーツタオルで顔を拭い、一呼吸置いてからリターンに備える選手のルーティンに注目してみてください。
テニス用語は、一度にすべて覚えようとしなくても大丈夫です。まずは自分が使っているテニスボールを打ち返しながら、自然と口に出てくる言葉から馴染んでいきましょう。言葉を知ることで、コート上の風景はもっと鮮やかに、もっと戦略的に見えてくるはずです。
さあ、次はあなたがコートで「アウト!」や「カモン!」と叫ぶ番です。


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