ガレージの隅で埃を被っていた父の形見、古いテニスラケット。そこには、今のシュッとしたデザインとは明らかに違う、どこか無骨で力強い「DUNLOP」の文字が刻まれていました。
「これ、本当にあのダンロップ?」
そんな疑問をきっかけに、私はこの100年を超えるブランドの足跡を追い始めました。皆さんも、古着屋で見つけたダンロップ トラックジャケットや、ヴィンテージカーの足元に光るロゴを見て、同じような好奇心を抱いたことはありませんか?
今回は、マニアの間では常識ながら、意外と知られていない「ダンロップのロゴの変遷」について、私の実体験を交えながら深掘りしていきます。
1. 黎明期の重厚感:セリフ体が語る「空気入りタイヤ」の誇り
1888年、ジョン・ボイド・ダンロップが息子の三輪車のために「空気入りタイヤ」を発明したことからすべては始まりました。
当時のロゴは、現代の「フライングD」のようなスピード感はありません。1950年代頃まで主流だったのは、文字の端に飾りがある「セリフ体」の書体です。実際に当時の広告ポスターを見ると、まるで銀行の看板のような、圧倒的な「信頼感」と「重厚さ」を感じます。
私がアンティークショップで見かけた古い灰皿に刻まれていたロゴは、この時代の流れを汲むものでした。手に持つとずっしりと重く、ゴム産業が「魔法の技術」だった時代のプライドが伝わってくるようです。
2. 伝説の「矢印ロゴ」と1960年代のモダニズム
1960年代に入ると、デザインは少しずつ洗練されていきます。この時期、タイヤのサイドウォールやスポーツ用品によく見られたのが、文字の横に「矢印」のような意匠が組み合わされたスタイルです。
私がテニスに没頭していた頃、先輩から譲り受けたマックスプライ マッケンローモデルには、まさにこの過渡期の空気感が宿っていました。現代のプリントとは違い、ウッドラケットに深く刻印されたロゴは、使えば使うほど手に馴染み、ヴィンテージならではの風格を放ちます。
3. 1985年、運命の「フライングD」誕生
私たちが今、最も見慣れている「D」の文字が右に流れるような躍動感あるロゴ。これは通称「フライングD」と呼ばれています。
このロゴが一般的に広く普及したのは1980年代半ばのこと。1985年に住友ゴム工業がダンロップの欧州拠点を買収し、グローバルブランドとしての再出発を図った時期と重なります。
当時、最新のル・マンタイヤを履かせた車がサーキットを駆け抜ける姿は、まさにこの「右肩上がりのD」が象徴するスピードそのものでした。この頃から、ロゴは単なる「社名」から、風を切り裂く「パフォーマンスの象徴」へと変わっていったのです。
4. ロゴから読み解く、製品の「生まれた時代」
中古市場でダンロップ製品を手に取ったとき、以下のポイントをチェックしてみてください。
- フォントが太く飾りが付いている: 1950年代以前〜60年代。歴史的価値が高い。
- カクカクとした直線的な書体: 70年代のモータースポーツ全盛期。
- 「D」のマークが独立している: 85年以降。現代に繋がるハイスペックの証。
古着のスニーカーひとつ取っても、ロゴの書体を見るだけで「あ、これは80年代後半のバブル期の勢いがあるデザインだな」と、時代背景まで見えてくるのが面白いところです。
最後に
ダンロップのロゴの変遷は、単なるデザインの変更ではなく、技術革新と挑戦の記録です。
次にあなたが、リサイクルショップやガレージで古いゴルフボールやタイヤを見かけたら、ぜひそのロゴをじっと見つめてみてください。そこには、かつて誰かがその性能に胸を躍らせた、熱い時代の記憶が刻まれているはずです。
年代ごとのロゴの違いをさらに詳しく知りたい方は、当時のカタログを模したブランドムックなどを探してみるのも、沼にハマる第一歩かもしれません。
今回ご紹介した年代別の特徴を参考に、あなただけの「ヴィンテージ・ダンロップ」を探してみてはいかがでしょうか?


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