実家の倉庫を整理していたら、色褪せた「D」のマークが刻まれた古いグラブが出てきた――。そんな経験を持つ野球好きは、意外と多いのではないでしょうか。今でこそタイヤやゴルフ用品の印象が強いダンロップですが、かつて野球界で確固たる地位を築いていた時代がありました。
「なぜタイヤメーカーが野球用品を?」と不思議に思うかもしれませんが、その背景にはZETT(ゼット)との深い協力関係がありました。当時のダンロップ製グラブは、単なるブランド貸しの製品ではなく、職人のこだわりが詰まった「本物」の道具だったのです。
実際に手に取ってみると、その革質の良さに驚かされます。現代の軽量化を追求したグラブとは一線を画す、手に吸い付くような重厚なステアハイド。使い込むほどに自分の手の形に馴染み、唯一無二の相棒へと育っていく感覚は、まさに古き良き時代のクラフトマンシップそのものです。私自身、中学時代に先輩から譲り受けたダンロップのグラブをオイルで磨き込み、真っ黒になるまで使い倒した記憶が鮮明に蘇ります。
残念ながら、現在はブランド戦略の統合によりダンロップ名義の新製品は市場から姿を消してしまいました。しかし、その魂はスリクソンやゼクシオといったスポーツテクノロジーへと引き継がれています。
もし、メルカリやヤフオクなどのオークションサイトで状態の良いダンロップのグラブを見かけたら、それは非常に幸運な出会いかもしれません。経年による紐の乾燥には注意が必要ですが、ローリングスやミズノとはまた違う、独特の渋みと信頼感。そんな「知る人ぞ知る名機」をあえて今、草野球のフィールドで解禁する。それは、道具の歴史を重んじるプレイヤーにしかできない、最高に粋な楽しみ方ではないでしょうか。


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