「ツーリングに行きたいけれど、予報は雨。しかも目的地のカフェまでの数百メートルは未舗装の砂利道らしい…」そんなシチュエーションで、多くのライダーが頭を抱えるはずです。スポーツタイヤでは雨が怖く、アドベンチャータイヤではワインディングの軽快さが損なわれる。そんなワガママな悩みを一撃で解決してくれる「突然変異」なタイヤ、ダンロップ MUTANTを1万キロ以上履き潰した経験から徹底的に深掘りします。
期待を裏切る「オンロードでの軽快さ」
MUTANTのトレッドパターンを初めて見た時、正直「ロードノイズが凄そうだな」とか「曲がる時にゴロゴロするんじゃないか?」と疑いました。しかし、走り出しの一歩目からその先入観は崩れ去ります。
最新のスポーツツーリングタイヤにも引けを取らない倒し込みの軽さ。フロントタイヤに採用された専用設計のおかげか、狙ったラインをピタっとなぞれる感覚は、まさにオンロードスポーツそのものです。さらに驚くべきは静粛性。ブロックの配置が工夫されているためか、時速100キロでの巡航でも耳障りな唸り音はほとんど気になりませんでした。
雨の日が「得意種目」に変わる瞬間
このタイヤの真骨頂は、やはりウェット路面です。不意の土砂降りに遭遇した際、路面の水膜をグイグイと切り裂いていく排水性の高さは、指先に伝わる接地感の強さで実感できます。MUTANTの深い溝は、ただの飾りではありません。
冬場の冷え切ったアスファルトでも、ハイシリカ配合のコンパウンドが瞬時に路面を捉えてくれる安心感。これは、ハイグリップタイヤを履いている時には味わえない「心の余裕」に直結します。「どんな状況でも帰ってこられる」という信頼こそが、ロングツーリングにおける最大の性能だと言えるでしょう。
M+S(マッド&スノー)の実力とキャンプ場での安心感
キャンプ場周辺のフラットダートや、不意に現れる砂利道。多くのオンロードバイクが足踏みする場面でも、MUTANTならスルスルと進んでいけます。
もちろん、ガレ場や深い泥濘地を攻める本格オフロードタイヤではありません。しかし、ロードバイクで踏み入れるのを躊躇うような「ちょっとした悪路」において、リアが空転せずにしっかりと地面を蹴り出す感覚は感動的です。この「守備範囲の広さ」が、旅の選択肢を大きく広げてくれます。
気になるライフ(寿命)とコストパフォーマンス
多機能なタイヤだけに「減りが早いのではないか?」という懸念もありましたが、私のケース(リッターネイキッドでツーリングメイン)では、約12,000キロまで実用圏内でした。
センター付近は耐摩耗重視のコンパウンドになっているため、高速道路を多用しても「台形減り」が起こりにくい印象です。交換時期が近づいてもハンドリングの違和感が少ないのは、ダンロップらしい真面目な作り込みを感じるポイントですね。
結論:このタイヤは誰のためのものか
ダンロップ MUTANTは、以下のようなライダーにとって最高の相棒になります。
- 1台のバイクでキャンプから峠道まで欲張りに楽しみたい。
- 天候に左右されず、安全にロングツーリングを完遂したい。
- スクランブラーやアドベンチャーバイクの足元をタフに演出したい。
一方で、サーキットでのタイム短縮や、膝を擦るような極限のバンク角を求める方には向きません。しかし、日本の四季と多様な路面状況を駆け抜ける「旅人」にとって、これ以上に心強い「変異種」は他に存在しないでしょう。
次にタイヤ交換の時期が来たら、ぜひ一度MUTANTを選択肢に入れてみてください。あなたのバイクライフの境界線が、きっと大きく広がるはずです。


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