テニスというスポーツは、ただボールを打ち合うだけではありません。私自身、コートに立ってラケットを振るたびに、その一挙手一投足に刻まれた数世紀分の歴史を感じずにはいられません。なぜ「テニス」という名前なのか、なぜスコアは「15・30・40」なのか。その謎を紐解くと、現代のプレーがさらに奥深いものに変わります。
テニスの語源は「テネ(Tenez)!」から始まった
テニスの発祥は、11世紀から12世紀頃のフランスにまで遡ります。当時の修道士たちが手のひらでボールを打ち合っていた「ジュ・ド・ポーム(手のひらの遊び)」がその原型です。
このゲームでサーブを打つ際、相手に対して「Tenez!(テネ/取ってみろ!)」と声をかけるのがマナーでした。この叫び声を、後にイギリス人がスポーツの名前そのものだと勘違いしたことが「テニス」の始まりだと言われています。
実際に現代のテニスで強烈なサーブを叩き込むとき、心の中で「テネ!」と呟いてみてください。単なる技術的なルーティンが、中世の騎士や修道士たちが守ってきた伝統の儀式のように感じられ、集中力が一段と高まるはずです。
スコアの数え方にも「体験的」な由来がある
テニスを始めて誰もが最初に戸惑うのが、あの独特なスコアの数え方でしょう。「1、2、3」ではなく「15、30、40」。一説には、当時の時計の文字盤をスコアボード代わりに使い、針を15分ずつ進めていた名残だと言われています。
さらに、0点を「ラブ(Love)」と呼ぶ理由。これはフランス語で卵を意味する「l’oeuf(ルフ)」が、数字の0の形に似ていたため、聞き間違えたイギリス人が「ラブ」と呼ぶようになったという説が有力です。
試合中、スコアが「0(ラブ)」になったとき、悔しさに飲まれそうになるかもしれません。しかし、「これはただの卵だ、ここから温めて孵化させればいい」と、語源に絡めたポジティブなイメージを持つことで、メンタルを安定させるベテランプレーヤーも少なくありません。
現代テニスに息づく歴史と体験の重み
テニスが「紳士・淑女のスポーツ」と呼ばれるのには、明確な歴史的理由があります。もともと王族や貴族の社交場であったため、現代でもウェアの「白」を基調とする文化や、審判への過度な抗議を慎む精神が色濃く残っています。
たとえば、ウィンブルドン選手権で徹底される「プレドミナントリー・ホワイト(ほぼ白)」のルール。これは汗が目立つのを嫌った貴族の身だしなみが由来です。現代の機能性ウェア、例えば テニスウェア を選ぶ際も、その背景を知っているだけで、身が引き締まる思いがするものです。
また、試合の合間に Apple Watch で心拍数を確認したり、スポーツ飲料 で水分補給をしたりする現代的な風景の中にも、対戦相手への敬意という「テネ!」の精神は脈々と流れています。
まとめ:語源を知ればテニスがもっと楽しくなる
テニスは、単なるフィジカルの勝負ではなく、言葉のやり取り(テネ!)から始まった「対話」のスポーツです。語源や歴史を知ることは、単なる知識の蓄積ではありません。それはコートの上で感じる孤独や緊張を、歴史という大きな文脈の中で楽しむための「知的なラケット」を手に入れるようなものです。
次にあなたがコートに立ち、テニスラケット を握ったとき。サーブの瞬間に、ぜひ1000年前のフランスに思いを馳せてみてください。その一球は、きっと今まで以上に重みのある、特別な一球になるはずです。


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