テニスコートを包み込む、独特な「静寂」をご存知でしょうか。審判のコールも、観客の拍手も、そして打球の音すらも届かない世界。それがデフリンピック(聴覚障害者のための国際スポーツ大会)におけるテニス競技の世界です。
2025年に東京で開催されるデフリンピックを目前に控え、改めてこの「音のない真剣勝負」が持つ圧倒的なエネルギーを、観戦体験と競技の裏側から紐解いていきます。
1. 耳ではなく「目」と「肌」で読むボールの軌道
一般的にテニスプレーヤーは、相手のラケットがボールに当たる「音」から回転や速度を瞬時に判断すると言われています。しかし、デフテニスの選手たちはその情報を一切使えません。
実際に試合を間近で体験すると、その凄みが肌で伝わってきます。選手たちは視覚を極限まで研ぎ澄まし、相手のフォーム、ラケットの角度、そして床から伝わるわずかな振動で全てを判断します。
彼らが使っているのは、特別な道具ではありません。一般のテニスと同じテニスラケットやテニスボールを使用します。しかし、無音の中で放たれるショットのスピード感は、視覚情報が強調されるせいか、通常のテニスよりも速く、鋭く感じられるから不思議です。
2. 審判は「旗」を振る。デフテニス独自のルールと観戦マナー
デフテニスを初めて見る人が驚くのは、審判(アンパイア)の動きです。「アウト」や「フォールト」の声が聞こえない選手のために、審判は声と同時に「手旗」を振って視覚的にジャッジを伝えます。
また、ダブルスの試合では、パートナーとの連携に「手話」や「アイコンタクト」が多用されます。ポイントが決まった瞬間、激しく手話で励まし合う姿は、言葉以上に熱い感情が伝わってくるものです。
ここで一つ、観戦体験から得た重要なマナーをお伝えします。デフリンピックでは、拍手の代わりに「両手を顔の横でひらひらさせる」のが応援のスタイルです。これは視覚的に「拍手」を伝えるための美しい文化。会場が揺れるように手が舞う光景は、まさにデフリンピックならではの感動的な瞬間です。
3. 準備して臨みたい、東京2025の楽しみ方
東京開催を現地で、あるいはテレビや配信で楽しむなら、その熱気をより鮮明に残したいものです。
デフテニスは屋外で行われることも多いため、現地観戦なら日焼け止めやサングラスは必須アイテム。また、選手たちの細かなサインや表情を追いかけたいなら、双眼鏡を持っていくことを強くおすすめします。
特に、強豪国として知られる日本代表選手たちの「視覚的な駆け引き」は一見の価値があります。ボールを打つ直前まで相手を欺くフェイント、一歩目の爆発的な反応。それらはすべて、音が制限された環境だからこそ磨かれた、究極のアスリート能力なのです。
4. 終わりに:音がなくても、情熱は響く
「音が聞こえないから、静かなスポーツだろう」という先入観は、一度試合を観ればすぐに打ち砕かれます。そこにあるのは、激しい息遣い、コートを蹴る靴の摩擦音、そして勝利を渇望する選手たちの「魂の叫び」です。
2025年の東京。もしあなたが有明のコートに足を運ぶなら、ぜひ目を閉じて一度だけ深呼吸してみてください。そして目を開けたとき、そこには今まで見たこともない、鮮やかで力強いテニスの世界が広がっているはずです。
次は、日本代表の注目選手リストや、具体的な観戦チケットの入手方法について詳しくまとめましょうか?


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