テニスの試合をテレビで見たり、実際にコートに立ったりしたとき、誰もが一度は「おや?」と思う瞬間があります。それは、スコアが「0(ゼロ)」ではなく「ラブ」と呼ばれたとき。
「愛をささやいているわけじゃないよね?」なんて冗談はさておき、この不思議な呼び名には、実はテニスの長い歴史と、ちょっとした「聞き間違い」の物語が隠されています。今回は、初心者の方が真っ先に抱くこの疑問を、経験者の視点を交えて紐解いていきましょう。
なぜテニスで「0」を「ラブ」と呼ぶのか?
結論から言うと、テニスにおける「ラブ(love)」は、数字の「0」そのものを指します。私自身、初めてテニスの試合に出たとき、スコアを数える際に緊張して「フィフティーン・ゼロ!」と叫んでしまい、審判から優しく「フィフティーン・ラブですよ」と訂正されたのは、今では良い思い出です。
多くの人が想像する「Love(愛)」とは直接的な関係はないというのが、現代の定説となっています。
【有力説】語源はフランス語の「卵(l’oeuf)」だった?
最も有力とされているのが、フランス語で卵を意味する「l’oeuf(ルッフ)」という言葉です。
テニスのルーツは、中世フランスの「ジュ・ド・ポーム」という競技だと言われています。当時の人々は、数字の「0」の形が丸いことから、それを「卵」に見立てて呼んでいました。これがイギリスに伝わった際、英語圏の人たちの耳には「ルッフ」が「ラブ」と聞こえた、あるいは発音しやすいように変化したという説です。
クリケットでも、無得点のことを「ダック(アヒルの卵)」と呼ぶ文化があるため、スポーツにおいて「0点=卵」という発想は、当時としてはごく自然なものだったのかもしれません。
その他の興味深い由来・語源説
卵説以外にも、いくつか面白い説が存在します。
- 「名誉」説:オランダ語で「名誉(loof)」のためにプレーするという言葉に由来するというもの。「お金(得点)のためではなく、名誉のために戦う」という、いかにも紳士のスポーツらしい高潔な考え方です。
- 「愛」説:得点がない状態でも、相手を愛し、純粋にゲームを楽しむという精神から来ているという説。ロマンチックですが、こちらは後付けの解釈という見方が強いようです。
どの説を信じるかはあなた次第ですが、こうした背景を知ると、ただの数字の羅列だったスコアボードが、少しだけドラマチックに見えてきませんか?
実際に体験してわかった「ラブ」の響きの心地よさ
自分でラケットを握るようになると、この「ラブ」という言葉の役割に気づかされます。
例えば、相手に1ポイントも取らせずに勝つ「ラブゲーム」。勝った側は爽快ですが、負けた側としては「0点で負けた」と言われるより「ラブゲームだった」と言われる方が、ほんの少しだけ精神的なダメージが和らぐ気がするのです。
また、試合開始時の「ラブ・オール(Love-all)」というコール。これは「0対0」という意味ですが、これから熱戦を繰り広げる両者が、お互いへの敬意を持って立ち向かう合図のようにも聞こえます。
これからテニスを始める方は、ぜひテニスラケットやテニスシューズを揃えて、実際のコートでこの「ラブ」という響きを肌で感じてみてください。
まとめ:テニスの不思議は「15・30・40」だけじゃない
テニスには「ラブ」以外にも、なぜ「15・30・40」と不規則に数字が増えるのかなど、多くの謎が残っています。これらは、かつて時計の文字盤をスコアボード代わりに使っていた名残だという説が有名ですが、そうした歴史の積み重ねが、テニスというスポーツに深い味わいを与えています。
次に試合を観戦するときは、ぜひ審判のコールに耳を澄ませてみてください。「ラブ」という言葉に込められた数百年の歴史を感じながら観る試合は、昨日までとは一味違ったものになるはずです。


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