「ウッドからカーボンへ」テニスラケット激動の70年代。名機たちの使用感と今選ぶべきヴィンテージモデル

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1970年代。それはテニス界において、単なる「道具の進化」を超えたドラマがコート上で繰り広げられていた時代です。ビヨン・ボルグ、ジョン・マッケンロー、ジミー・コナーズ。彼らが握っていたのは、現代の軽量カーボンラケットとは似て非なる、魂の宿った「武器」でした。

私自身、長年テニスを嗜んできましたが、あえて今、1970年代の名機を手に取ることがあります。そこには、最新のテクノロジーでは決して味わえない、テニスの真髄とも言える「手応え」が詰まっているからです。今回は、70年代を彩った名機たちの圧倒的な個性と、それらを現代で使いこなすためのリアルな体験談をお届けします。

【体験】70年代ラケットが教えてくれる「真ん中で打つ」という悦び

現代のラケット、例えば最新のヨネックス イーゾーンなどは、どこに当たってもそこそこ飛んでくれる「魔法の杖」です。しかし、70年代の主流だったウッドラケット、例えばウィルソン ジャッククレーマーを手に取ると、その常識は打ち砕かれます。

実際にコートで振ってみると、まず驚くのはその「重さ」です。現代の主流が300g前後であるのに対し、当時のラケットは平気で360gを超えてきます。そして、フェース面積。たったの65平方インチ程度しかありません。

初めて打った時、私はスイートスポットを外した瞬間に「ビリビリッ!」と腕を駆け抜ける衝撃を覚えました。現代のラケットが衝撃を吸収してくれるのに対し、ウッドはミスをそのままプレーヤーに突きつけます。しかし、一度芯を食った時の打感はどうでしょう。パチンという乾いた音と共に、ボールが吸い付くように飛び出す感覚。それは、自分の体の一部がボールに直接触れているような、極上の官能性です。この「芯で捉えなければ飛ばない」という厳しさが、自然と丁寧なスイング、そしてボールを最後まで見るというテニスの基本を思い出させてくれます。

70年代を象徴する伝説の名機たち

ウッドの最高峰 ダンロップ マックスプライ フォート

マッケンローが愛したことで知られるこのモデルは、まさに「ウッドの完成形」です。何枚もの異なる木材を積層させたそのフレームは、しなりが非常に独特。ボールをグッと掴んでから放つ感覚は、現代の硬いフレームでは再現不可能です。ドロップショットやボレーなど、指先の感覚をボールに伝えたいシーンで、このラケットは最高のパートナーになります。

異端のスチール ウィルソン T2000

ジミー・コナーズの象徴とも言える、銀色に輝くスチール製ラケット。周囲にワイヤーが張り巡らされたその奇抜なルックスは、今見ても斬新です。ウッドよりも反発力が強く、打球音は「キーン」という独特の金属音。当時のプレーヤーたちが、この未知のパワーを制御するためにどれほど苦労し、そして熱狂したのか。実際に打ってみると、コナーズのような攻撃的なプレイスタイルがこの道具から生まれたことが痛いほど理解できます。

革命のデカラケ プリンス クラシック

70年代後半、テニス界に激震を走らせたのがアルミ製の「デカラケ」です。ハワード・ヘッドによって生み出されたこの巨大なラケットは、それまでの「テニスは難しいもの」という概念を覆しました。スイートスポットが飛躍的に広がり、初心者でもラリーが続く。このラケットの登場が、テニス人口を爆発的に増やしたことは歴史的事実です。

現代のカーボンラケットとの決定的な違い

よく「昔のラケットは飛ばない」と言われますが、それは半分正解で半分間違いです。重さを利用してしっかり振り抜けば、ボールには凄まじい推進力が宿ります。

決定的な違いは「スピン」と「打感」の質です。

現代のバボラ ピュアドライブのようなモデルは、フレームの硬さとガットのたわみで強烈なスピンを生み出しますが、70年代モデルはフラット・ドライブが基本。ボールを「擦る」のではなく「厚く当てる」技術が求められます。この違いを理解すると、現代のテニスがいかに道具に助けられているか、そして当時の選手がいかに精密なコントロール技術を持っていたかが分かります。

ヴィンテージ・ラケットを今、手に入れる際の注意点

もし、あなたがメルカリやヤフオク、あるいは骨董市でこれらを見つけたなら、以下の3点は必ずチェックしてください。

  1. フレームの歪み: ウッドは湿気や保存状態により、左右に歪んでいることが多いです。必ず面を横から覗いて確認しましょう。
  2. 接着面の剥がれ: 木材の積層が剥がれていないか。叩いた時に「カチカチ」ではなく「ベコベコ」という鈍い音がしたら、それは寿命です。
  3. ストリングの選択: 決して現代のポリガットを張ってはいけません。フレームが負けて折れる可能性があります。柔らかいテクニファイバー エックスワン バイフェイズなどのナイロンマルチを、40ポンド以下の低テンションで張るのが、古き良き打感を現代に蘇らせるコツです。

最後に

1970年代のラケットを握ることは、テニスの歴史を旅することと同義です。効率や勝率だけを求めるなら、間違いなく最新のウィルソン ブレードを選ぶべきでしょう。しかし、白熱した時代の息吹を感じ、一球一球の打感に一喜一憂する。そんな贅沢なテニスの楽しみ方が、70年代の名機たちには今も宿っています。

クローゼットの奥で眠っているジャッククレーマーがあるなら、あるいはショップの隅で埃を被ったマックスプライを見つけたなら。ぜひ一度、コートへ連れ出してみてください。そこには、あなたが忘れていた「テニスの本当の感触」が待っているはずです。

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