「パチン!」と快音を響かせていたはずの相棒から、ある日突然「ボコッ」という鈍い音が混ざるようになる。テニスプレーヤーなら誰もが背筋の凍る瞬間です。フレームをよく見ると、塗装のハゲか、あるいは致命的な「ヒビ」か判別がつかない細い線が……。
私もかつて、お気に入りだったバボラ ピュアドライブにヒビが入った際、「まだ使えるはず」と自分に言い聞かせて使い続けた経験があります。しかし、その結果待っていたのは、上達の妨げと手首の痛みでした。
今回は、自身の失敗談と専門的な視点を交え、ラケットのヒビの見分け方と、その後の賢い判断基準を詳しく解説します。
1. 【画像で比較】その線は「ヒビ」か「塗装剥げ」か?
最も多い悩みは「単なる傷(チップ)なのか、内部のカーボンまで届くクラック(ヒビ)なのか」という点です。
塗装剥げ(チップ)の特徴
コートのサーフェスに擦ったり、ラケット同士が軽く接触したりした際に起こります。
- 見た目: 表面の塗料だけが剥がれ、下の白い下地や黒いカーボンが「点」で見えている状態。
- 感触: 爪で触れても段差があるだけで、周囲を強く押してもしなることはありません。
ヒビ(クラック)の特徴
目に見える「線」が入っている場合は要注意です。
- 見た目: 髪の毛のような細い線(ヘアライン)が、フレームを横断するように入っている。
- 異音: ボールを打った時に「ビーン」という嫌な振動が残る、あるいは「ペチッ」という力のない音がする。
- 感触: ヒビの両サイドを指でグッと押したとき、わずかに隙間が開く、あるいは「ミシッ」と音がすれば、それは確実にカーボンが断裂しています。
2. 体験談:ヒビが入ったラケットを使い続けた代償
私が学生時代、ヨネックス VCOREのフレーム肩口に小さなヒビを見つけた時のことです。金欠だった私は「ガットを張れているうちは大丈夫」と強行突破しました。
しかし、一週間もしないうちに異変が起きました。
まず、コントロールが完全に狂いました。 フレームの剛性が一部失われることで、インパクトの瞬間にラケットが妙なしなり方をし、狙った場所からボール一個分外れる感覚です。
さらに最悪だったのは、右肘への違和感です。本来カーボンが吸収すべき衝撃が、断裂箇所で増幅され、ダイレクトに腕に伝わってくるようになりました。結局、ラケットを買い替えるだけでなく、整骨院に通う羽目になり、高くつく結果となったのです。
3. ヒビが入ったら修理はできるのか?
結論から言えば、**「競技レベルでの使用を考えるなら、買い替えがベスト」**です。
最近ではカーボン補修を行う専門業者も存在し、カーボン補修材などを用いて個人で直そうとする方もいます。しかし、以下のリスクを覚悟しなければなりません。
- バランスと重量の変化: 補修箇所を固めるため、どうしてもその部分が重くなり、スイングウェイトが変わります。
- 再発の可能性: ガットを張る際、ラケットには約20kg以上の強い張力がかかります。一度断裂した箇所は、張力の負荷に耐えきれず再度割れる可能性が非常に高いのです。
もし購入して数回でヒビが入ったのであれば、ぶつけた記憶がない限り「初期不良」の可能性もあります。まずは購入店へ相談しましょう。
4. ヒビを未然に防ぐための3つの習慣
お気に入りのウィルソン プロスタッフのような高価なラケットを長持ちさせるには、日頃のケアが欠かせません。
- エッジガードの活用: フレーム上部は最も地面と接触しやすい場所です。ヨネックス エッジガードを貼るだけで、不意の接触によるクラックのリスクを劇的に下げられます。
- 極端な高テンションを避ける: メーカー推奨テンションを大幅に超えてガットを張ることは、フレームを常に「悲鳴を上げている状態」にすることと同じです。
- 夏場の車内放置は厳禁: 炎天下の車内は70度を超えることもあります。カーボンを固めている樹脂が熱で変質し、強度が著しく低下します。移動には必ずテニス ラケットバッグ(断熱機能付き)を使用しましょう。
5. まとめ:違和感は「買い替え」のサイン
ラケットのヒビは、テニスにおける「怪我の予兆」です。
「まだ打てるから」と使い続けることは、ブレーキの壊れた車で高速道路を走るようなもの。打球音や打球感に少しでも「おや?」と感じたら、それは新しい相棒を探すタイミングかもしれません。
最新のヘッド スピードやダンロップ CXなど、進化した最新モデルを手にすることで、怪我のリスクを減らすだけでなく、あなたのテニスが劇的に進化するきっかけにもなるはずです。
大切なのは、道具を信頼してフルスイングできる環境を整えること。ヒビを見つけたら、勇気を持って一歩踏み出しましょう。


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