「あれ、こんなところに線が入ってたっけ?」
お気に入りのヨネックス バドミントンラケットをバッグから取り出したとき、フレームの12時方向に走る細い亀裂を見つけて指先が止まりました。バドミントンやテニスを嗜む人なら誰もが経験する、あの心臓がキュッとなる瞬間です。
「まだ打てるし、ただの塗装剥げだと思いたい。でも次のガット張り替えでバキッといったらどうしよう……」
そんな葛藤を抱えながら、実際にショップへ持ち込み、数々の「ヒビ入りラケット」と決別してきた私の体験をもとに、後悔しないための判断基準をリアルに綴ります。
その違和感、気のせいじゃない。「ヒビ」が確信に変わる打球感のサイン
見た目だけでは「塗装の傷」か「フレームの損傷」か判断がつかないことも多いですよね。私が実際にヒビの入ったラケットで打っていて感じた、身体に伝わる「異常サイン」をまとめました。
- 打球音が「ボソッ」と鈍くなる乾いた「パシッ」という快音が消え、どこか湿ったような、力が逃げているような音が混じり始めます。
- 嫌な振動が手首に残るスイートスポットで捉えたはずなのに、打った瞬間に「ビリビリッ」と不快な余韻が腕に伝わってきます。これはフレームの剛性が失われ、衝撃を吸収しきれていない証拠です。
- コントロールが急にバラつく「今の、絶対入ったはずなのに」というアウトが増えます。フレームが歪んでいると、インパクトの瞬間に面が微妙にブレるため、狙い通りのコースに飛ばなくなります。
私はこの違和感を無視してエアロバイトを強めに張ったまま使い続けましたが、最終的にはスマッシュの瞬間にフレームが内側にひしゃげ、取り返しのつかない形になりました。
意を決してショップへ。「これ、ガット張れますか?」の答え
結論から言うと、ほとんどのプロショップで「ヒビがあるラケットへのガット張り」は断られます。
私が通っている馴染みのショップ店員さんは、ストリンギングマシンにラケットをセットする前に、必ずフレームの四隅を指で弾いて音を確認します。「あー、ここ、音が死んでますね。ヒビが入ってます」と言われたら、もうイエローカードです。
なぜ断られるのか。それは、ガットを張る際にフレームには20〜30ポンド(約10kg以上)の凄まじい内圧がかかるからです。健康なフレームなら耐えられますが、ヒビという「弱点」がある場合、機械で引っ張っている最中に「バキッ!」という爆音とともに粉砕します。店員さんにとっても怪我のリスクがある、極めて危険な作業なのです。
「塗装剥げ」か「ヒビ」か。絶望を回避するための見分け方
どうしても諦めきれない時は、以下の方法でセルフチェックをしてみてください。
- 爪を立ててスライドさせる表面の傷に対して垂直に爪を滑らせます。ただの塗装剥げなら表面的な凹凸で済みますが、爪が「ガリッ」と深く引っかかる感覚があれば、それはカーボン層まで達しているヒビの可能性が大です。
- グロメット付近を凝視する一番ヒビが入りやすいのは、ガットを通す穴(グロメット)の周辺です。ここから放射状に細い線が伸びていたら、それは末期症状。グロメットニッパーで古いグロメットを外してみると、中でカーボンが割れているのがハッキリ見えることもあります。
- コインで叩いて音を聴く正常な箇所をコインの縁で軽く叩くと「コンコン」と高い音がしますが、ヒビがある場所は「ポコポコ」と鈍い音がします。
修理して使うか、新しい相棒を探すか
最近はカーボン補強修理を専門に行う業者さんも増えています。数千円から1万円程度で、見た目には分からないほど綺麗に直ることもあります。
しかし、私の経験上、修理したラケットは「別のラケット」になります。
補強した分だけ重量バランスが変わり、カーボンのしなり方も変わるため、かつての絶妙な打球感は戻ってきません。もしあなたが「試合で勝ちたい」と考えている現役プレーヤーなら、修理に予算をかけるよりも、思い切ってアストロクスなどの最新モデルへ新調することをおすすめします。
まとめ:ラケットの悲鳴を無視しないで
ラケットのヒビは、人間で言えば「疲労骨折」のようなものです。
「まだ使える」と自分を騙して使い続けるのは、怪我のリスクを高めるだけでなく、あなたの技術向上を妨げる要因にもなります。
もし、愛用のラケットに怪しい線を見つけたら、まずは一度ガットを切り、フレームを解放してあげてください。そして、ショップの店員さんに相談してみましょう。
新しいラケットを手にしたとき、その「弾きの良さ」に驚くはずです。「ああ、やっぱり前のラケットは寿命だったんだな」と納得できたとき、あなたのプレーはまた一段階、進化します。


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