テニスやバドミントンを長く続けていると、一度はぶち当たる壁があります。それは「もっと楽にボールを飛ばしたい」あるいは「思い切り振ってもコートに収まるコントロールが欲しい」という切実な悩みです。そこで重要になるキーワードが、ラケットの「剛性(硬さ)」です。
カタログスペックの数値だけでは分からない、実際にコートでボールを打った瞬間の「手に伝わる感覚」や、連戦での「腕の疲労感」の違いなど、体験に基づいたリアルな視点で剛性の正体を解き明かします。
ラケットの「剛性」とは何か?数値が示す打球感の正体
ラケット選びにおいて「剛性(フレックス)」は、フレームのしなりにくさを表します。一般的にテニスラケットではRA値という指標で示され、数値が高いほど硬く、低いほど柔らかいことを意味します。
しかし、実際にコートに立つと、この数値は単なる「硬い・柔らかい」以上の意味を持ちます。剛性が高いラケットは、インパクトの瞬間にフレームが変形せず、ボールを弾き返す「パワー」を生み出します。一方で、低いラケットはフレームが「しなる」ことでボールを掴む感覚、つまり「ホールド感」をプレイヤーに提供してくれるのです。
【体験レビュー】剛性が高い(硬い)ラケットを使い込んだ感想
かつて私が使用していたピュアドライブのような高剛性ラケットは、まさに「大砲」のような武器でした。
圧倒的な反発力と初速
まず驚くのは、少し当てるだけでボールが勝手に飛んでいく感覚です。ボレーの場面では、相手の鋭い突き球に対して面をセットするだけで、パンッと鋭い弾丸ボレーが返ります。非力な方や、ダブルスでネットプレーを重視する人にとっては、これ以上ない味方になります。
芯を外した時の安心感
剛性が高いとフレームが捻じれにくいため、スイートスポットを多少外しても面がブレません。「今の、ミスショットかな?」と思ったボールが意外にも深く入っているのは、高剛性ラケットならではの恩恵です。
唯一の懸念は「腕への衝撃」
ただし、長時間使っていると、手首や肘に「ピリッ」とした振動が蓄積されるのを感じました。フレームがしならない分、衝撃がダイレクトに体に伝わるため、筋肉が疲れてくると打球の硬さがダイレクトに負担となります。
【体験レビュー】剛性が低い(柔らかい)ラケットを使い込んだ感想
一方で、プレステージやVCORE PROのような、いわゆる「しなる」ラケットに持ち替えた時は、全く別のスポーツをしているような感覚に陥りました。
「ボールを潰す」という快感
柔らかいラケットの最大の魅力は、インパクトの瞬間にボールがラケット面に吸い付くような感覚です。自分のスイングの力が、そのままボールの回転量や軌道に変換されているのが手に取るように分かります。「ここで急激に落としたい」という微細なコントロールが、指先の感覚とリンクするのです。
長試合でも枯れないスタミナ
フレームが衝撃を吸収してくれるため、3セットマッチの後半でも腕が重くなることが少なくなりました。体に優しいという特性は、ベテランプレイヤーや、毎日ハードに練習する学生にとって大きなメリットです。
飛ばすには「技術」と「筋力」が必要
反面、ラケットが助けてくれないため、中途半端なスイングをするとボールがネットに刺さります。常にしっかりと足を決め、体全体で運ぶ意識が求められる「玄人好み」の性格と言えます。
あなたに最適な剛性はどっち?タイプ別の選び方
これまでの体験を踏まえ、プレイヤーのスタイルごとに最適な選択肢を整理しました。
- スピードとパワーで圧倒したい、または楽に飛ばしたい方迷わず高剛性(RA値高め)のラケットを選びましょう。最新のEZONEなどは、硬さの中にも独自の振動吸収技術が含まれており、パワーと快適性を両立しています。
- 自分の意志でボールを操りたい、繊細なタッチを重視する方低剛性(RA値低め)のラケットが最適です。グラビティのようなモデルは、独特のしなりによって圧倒的なコントロール性能を発揮します。
- 怪我が不安、または長くテニスを楽しみたい方中〜低剛性のモデルをおすすめします。打球時のマイルドな感覚は、関節への負担を劇的に軽減してくれます。
まとめ:剛性は「自分のスイング」への回答
ラケットの剛性に正解はありません。あるのは、あなたのスイングスピードや、あなたがコートで何を実現したいかという「目的」との相性だけです。
もし今、あなたが「ボールが飛びすぎてコートに収まらない」と感じているなら、少し剛性を落としたモデルを。逆に「一生懸命打っているのにボールが浅くなる」なら、剛性の高いモデルを試してみてください。
道具を変えることは、自分の感覚をアップデートすることでもあります。次の練習では、ぜひ「フレームのしなり」に意識を向けて、自分にとって最高の相棒を見つけ出してください。


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