「たった0.5インチ(約1.3cm)でしょ?」と侮ることなかれ。テニスラケットの全長選びは、あなたのテニス人生を左右するほどインパクトがあります。多くのプレーヤーが「黄金スペック」と呼ばれる27インチを無意識に選んでいますが、実はその数センチの差に、サーブの爆発力や守備の粘り強さが隠されているのです。
今回は、標準サイズからロングサイズまで数々のラケットを打ち込んできた筆者の実体験をもとに、後悔しないラケットの「長さ」の選び方を深掘りします。
そもそもラケットの全長に決まりはあるのか?
一般的に「大人用」として売られているラケットの多くは、27インチ(約68.58cm)です。これはテニスの長い歴史の中で、操作性とパワーのバランスが最も優れていると証明された「標準」の長さ。
しかし、公式ルール(ITF規定)では最大29インチまで認められています。たった数センチ伸ばすだけで遠心力が跳ね上がり、驚くようなパワーボールが打てるようになります。一方で、ジュニア用にはヨネックス ジュニアラケットのように、成長に合わせて19インチから26インチまで細かく設定されており、いかに「全長」がスイングに影響を与えるかが分かります。
【体験談】ロングサイズ(長ラケット)に変えて起きた「劇的な変化」
私が初めて27.5インチのロングラケット、具体的にはバボラ ピュアドライブ プラスを手にした時の衝撃は今でも忘れません。
1. サーブの打点が「2階」になった感覚
わずか1センチ強長くなっただけですが、サービスライン付近での「角度」が明らかに変わりました。これまではネットを気にして抑えていたサーブが、高い打点から打ち下ろせるようになり、サービスエースの数が目に見えて増えたのです。トスを少し高く上げる必要はありますが、物理的なリーチの差は残酷なほど結果に現れます。
2. 「届かないはずのボール」にラケットが届く
ダブルスのポーチや、左右に振られた際の外側のボール。あと数ミリでフレームショットになっていたボールが、しっかり面に乗って返るようになります。この「粘り」が相手へのプレッシャーとなり、ミスを誘える場面が増えたのは大きな収穫でした。
3. ただし、代償もあった「ボディへの弱さ」
いいことばかりではありません。一番苦労したのは、正面に来た速いボールの処理です。ラケットが長い分、取り回し(ハンドリング)がコンマ数秒遅れます。特にボレーボレーの場面では、標準サイズのウィルソン ウルトラを使っている時のような軽快さは影を潜め、少し「もっさり」とした感覚に悩まされました。
全長が長くなると「重さ」の感じ方が変わる
ここがSEO的なスペック表だけでは見えない落とし穴です。カタログ上の重量が同じ300gでも、27インチと27.5インチでは、振った時の重さ(スイングウェイト)が全く違います。
長いラケットは先端に重心が寄るため、筋力がないプレーヤーが無理にロングサイズを使うと、手首や肘を痛めるリスクがあります。私も連戦が続いた際、ラケットの遠心力に振り回されてしまい、テニス肘の予兆を感じて慌ててプリンス ファントムのようなしなやかな標準モデルに戻した経験があります。
あなたにぴったりの全長を選ぶためのチェックリスト
結局、どちらを選べばいいのか。私の経験から導き出した答えはこうです。
- 「標準(27インチ)」を選ぶべき人
- ネットプレーが多く、ラケットの操作性を最優先したい。
- プレースタイルがまだ固まっていない初中級者。
- 疲れにくさ、怪我のしにくさを重視する。
- ヘッド スピードのような、オールラウンドな操作感を求める人。
- 「ロング(27.25〜27.5インチ)」に挑戦すべき人
- 身長があまり高くなく、サーブの打点を補いたい。
- ベースラインからのストロークで、相手をパワーで圧倒したい。
- 既にスイングが安定しており、さらにリーチを伸ばしたい中上級者。
- ヨネックス EZONE 98プラスのような、パワー重視のモデルを探している人。
まとめ:全長は「武器」にも「毒」にもなる
ラケットの全長は、単なる数値ではありません。それは自分のリーチを拡張する魔法の杖であり、同時にコントロールを難しくするジャイロスコープでもあります。
もし今のテニスに「あともう少しのパワー」や「あともう一歩の届き」を求めているなら、ロングサイズの世界を覗いてみる価値は十分にあります。逆に、ボレーでのミスが増えて悩んでいるなら、一度標準の27インチに立ち返り、自分の手のひらのような感覚を取り戻すべきでしょう。
道具に自分を合わせるのではなく、自分の理想のプレーに道具を合わせる。その第一歩として、ぜひ「全長」という視点でラケットを選び直してみてください。


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