卓球において、ラバー選び以上にプレイヤーの感覚を左右するのが「ラケットブレード」です。カタログの数値だけでは決して分からない、実際にボールを打った時の響き、手に残る余韻、そして「思い通りに操れているか」という実感。これらこそが、上達への最短ルートを切り拓く鍵となります。
かつて私は、とにかくスピードを求めてガチガチに硬い特殊素材のビスカリアを手にしたことがあります。しかし、実際には自分のスイングスピードが追いつかず、ボールが台に収まらないという苦い経験をしました。この失敗から学んだのは、ブレード選びは「自分の実力と感覚にどれだけ寄り添えるか」がすべてであるということです。
1. 5枚合板か、7枚合板か。木材が教えてくれる「育てる」楽しさ
初心者が最初に通るべき道であり、上級者が最後に戻ってくる場所。それが木材合板ブレードです。
5枚合板の「しなり」が生む安心感
5枚合板の代表格といえばコルベルですが、その魅力は何と言っても「ボールを掴む感覚」にあります。ドライブを打つ際、一瞬だけ球がブレードに沈み込み、そこから回転をかけて放り出すような独特のしなりを感じます。
- 実際の体験: 「あ、今しっかり回転がかかったな」という感覚が指先にダイレクトに伝わるため、打球ミスを道具のせいにせず、自分の技術として修正できる強みがあります。
7枚合板の「芯の強さ」
もう少し威力が欲しいけれど、木材の打球感は捨てがたい。そんな時にクリッパーウッドのような7枚合板を振ると、その安定感に驚くはずです。5枚合板よりも板が厚く、台上のフリックやスマッシュが「パシッ」と鋭く決まる快感は、7枚合板ならではのものです。
2. 特殊素材(カーボン)という禁断の果実、そのリアルな手応え
現代卓球の主流は、間違いなくカーボンなどの特殊素材を編み込んだブレードです。しかし、ここには「アウター」と「インナー」という大きな分かれ道が存在します。
アウターカーボンの「爆発力」
樊振東 ALCに代表されるアウターカーボンは、板の表面に近い位置に素材が配置されています。軽く当てただけでボールが弾き出されるため、前陣でのピッチの早い展開では圧倒的な優位に立てます。
- 使用者の声: 「自分の力が10だとしたら、12や13の威力で飛んでいく。ただし、体勢が崩れた時に無理やり入れるのは至難の業」というのが本音です。
インナーカーボンの「二面性」
木材の柔らかさとカーボンの威力をいいとこ取りしたいなら、インナーフォース レイヤー ALCのようなタイプが最適です。
- 感覚の正体: 軽打時はまるで5枚合板のような大人しさなのに、一歩下がってフルスイングした瞬間に「キィィィン」という高い音とともにカーボンが仕事をし始める。この「豹変する打球感」に魅了されるプレイヤーは後を絶ちません。
3. 最後に決めるのは「重さ」と「重心」のバランス
忘れてはならないのが、ブレードの個体差、特に「重さ」です。カタログに「平均85g」とあっても、実際には80gから90gまでバラつきがあります。
私は以前、あえて重めの92gのブレードを選んだことがありますが、練習の後半で手首が悲鳴を上げ、肝心の振り抜きが鈍くなってしまいました。逆に軽すぎると、相手の強打に押されてしまい、ブロックが浮いてしまう現象が起きます。
- 選定の極意: ラバーを貼った後の総重量をイメージしてください。振り切れる範囲で「少し重め」を選ぶのが、現代のプラスチックボールに打ち勝つためのひとつの正解です。
まとめ:あなたの右腕となる1本を見つけるために
ラケットブレード選びに正解はありません。しかし、「打っていて気持ちがいいか」「ミスをした理由が手に伝わってくるか」という直感は、どんなレビューサイトの言葉よりも信頼できます。
もし迷っているなら、まずはスワットのような評価の定まったスタンダードな1本から始め、そこを基準に「もう少し弾みを」「もう少し柔らかさを」と自分だけの指標を作っていくことを強くおすすめします。
最高のブレードと出会えた時、あなたの卓球は技術を超えた「感覚の世界」へと進化するはずです。


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