テニスラケット選びで、誰もが一度はぶつかる壁。「黄金スペックならどれも同じじゃないの?」という疑問。私もかつてはその一人でした。スペック表の数字だけを見れば、重量300g、バランス320mmと瓜二つ。しかし、実際にコートに立ち、フルスイングした瞬間にその幻想は打ち砕かれます。
今回は、王道中の王道であるピュアドライブと、スピンモンスターの異名を持つVCOREを徹底比較。実際に1ヶ月間、スクールと試合で交互に使い倒して分かった「リアルな使用感」を、忖度なしでお伝えします。
1. 衝撃のファーストインプレッション:弾きか、食いつきか
まず驚いたのは、インパクトの瞬間の「音」と「手に伝わる振動」の違いです。
ピュアドライブに持ち替えて最初にストロークを打った時、まるでラケット自体が意思を持っているかのようにボールが勝手に飛んでいく感覚に陥りました。「パーン!」という乾いた高い音とともに、当てるだけでベースライン際までボールが伸びていきます。オフセンター(芯を外したショット)でも、ラケットのパワーが無理やり解決してくれる。この「圧倒的な楽さ」は、体力が削られる試合後半でどれほど救いになるか計り知れません。
一方で、VCOREは全く別物の顔を見せます。インパクトの瞬間、一瞬ボールがストリング面に「ギュッ」と沈み込むような感覚があるのです。自分で「運んでいる」という確かな手応え。この食いつきがあるからこそ、フルスイングしてもバックアウトする怖さがありません。自分のスイングスピードがそのままボールの回転量に変換される、あの独特の安心感は中毒性があります。
2. サービスで実感する「軌道」の変化
サービスの場面では、この2本の性格の違いがより顕著に現れました。
ピュアドライブで打つフラットサーブは、とにかく速い。相手がレシーブで差し込まれる場面が明らかに増えました。トスを少し前に上げて、上から叩きつけるだけでエースが取れる。そんな「暴力的なパワー」を感じます。ただし、スライスサーブで曲げようとすると、パワーがありすぎてラインを割ってしまうことも。
逆に、VCOREはセカンドサーブの安心感が異常です。跳ねるキックサーブを打とうとした際、フレーム上部の「Aero Fin」のおかげか、ヘッドの走り方がスムーズ。カシュッという音とともに、相手のバック側に高く跳ね上がる弾道が面白いように打てます。ダブルスの試合で、絶対にダブルフォルトしたくない場面で握りたくなるのは、間違いなくこちらでした。
3. 試合で使ってわかった「ボレー」の意外な落とし穴
「パワーがあるラケットはボレーが楽」と言われますが、実際に使ってみると少し印象が違いました。
確かにピュアドライブは、相手の強いショットに面を合わせるだけで、鋭いボレーが返ります。しかし、ドロップボレーなどの繊細なタッチが必要な場面では、ラケットの反発が強すぎて「飛びすぎてしまう」怖さが常にありました。
その点、VCOREはネット際での操作性が非常に高い。フレームが適度にしなってくれるため、足元の難しいボールも柔らかく拾うことができます。自分から「タッチ」を作りに行きたいプレーヤーにとっては、この繊細さは武器になります。
4. 結論:あなたが選ぶべきはどっち?
この2本を使い込んで出した、私の結論はこうです。
「パワーこそ正義」なら ピュアドライブ
- 楽に深いボールを打ちたい。
- サーブで相手を圧倒したい。
- フォームが崩れてもラケットに助けてほしい。そんな「効率重視」のプレーヤーには、これ以上の相棒はいません。
「スピンとコントロール」なら VCORE
- 自分のスイングでボールを自在に操りたい。
- エグい角度のクロスショットを打ち込みたい。
- インパクトの食いつく感覚を重視したい。技術を磨き、コートを立体的に使いたいストローカーには、こちらを強くおすすめします。
スペック表の数字は同じでも、コートの上で描く放物線は全く異なります。あなたが次にコートに立つ時、隣に置いてあるべきはどちらのラケットでしょうか?今回のレビューが、あなたの「運命の1本」を見つける助けになれば幸いです。


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