テニスの試合で、誰しも一度は「壁と打っているような絶望感」を味わったことがあるはずです。それが、通称「シコラー」と呼ばれるプレイヤーです。
派手なエースを狙うわけでもなく、ただひたすら深く、ゆっくりとしたボールを返し続ける。こちらが痺れを切らして強引に打ち込めば、待ってましたと言わんばかりにミスを誘われる。あの、コートの反対側から漂ってくる「絶対にミスしないぞ」という異様なプレッシャーは、経験した者にしかわからない苦しみです。
今回は、私が過去に何度もシコラーにボコボコにされ、ラケットを投げ出したくなった経験から学んだ、シコラーを攻略するための「戦術」と「メンタル」を包み隠さず共有します。
なぜシコラーはあんなに「うざい」のか?強さの正体
シコラーが強い最大の理由は、彼らが「テニスは確率のスポーツである」という真理を誰よりも深く理解しているからです。
多くの一般プレイヤーは、華やかなプロのプレーに憧れ、テニスラケットを振り抜いてエースを狙いたがります。しかし、シコラーは違います。彼らの目的はエースを取ることではなく、**「相手にあと1球打たせること」**だけに特化しています。
私がかつて対戦したシコラーは、どんなに振り回しても、最後の最後でテニスシューズを滑らせながら、高いロブで時間を稼いできました。こちらの体力が削られ、足が止まり、呼吸が乱れたところで、ひょろひょろとしたチャンスボールが来る。それを叩き込もうとしてネットにかける……。この「自滅のサイクル」こそが、シコラーが最も好むエサなのです。
【体験談】プライドが粉砕された「地獄の3時間」
ある市民大会での出来事です。相手は、お世辞にも体格が良いとは言えない、少し年配の男性でした。アップの時点では「これなら勝てる」と確信していました。しかし、試合が始まると状況は一変します。
私の放つ時速180km(のつもりの)サーブも、渾身のフォアハンドも、すべて「ふわっ」としたスライスやロブで返ってきます。決まったと思ったショットが、気づけば足元に落ちている。
20往復、30往復とラリーが続くうちに、私の頭の中は「早くこのラリーを終わらせたい」という焦りで支配されました。強引にアプローチに出て、足元に沈められ、ボレーをミスする。その時の相手の、無表情で淡々とポジションに戻る姿がどれほど憎らしかったか。
結局、スコアは0-6、1-6。技術的には自分の方が上だと思っていたのに、精神的には完敗でした。その日、帰宅してすぐにテニス練習機を購入し、自分がいかに「打つこと」しか考えていなかったかを猛省しました。
シコラーを「カモ」にするための5つの攻略法
あの屈辱から数年、私はシコラー対策を徹底的に研究しました。今ではシコラーと当たると「自分の忍耐力を試す最高の練習だ」と笑えるようになっています。具体的な戦術は以下の通りです。
1. 「30往復」をデフォルトにする
シコラーに勝てない最大の原因は「早く決めたい」という欲です。試合前から「今日は1ポイントに5分かける」という覚悟を持ってください。相手が返してくるのが当たり前だと思えば、イライラは激減します。
2. センターセオリーと高低差の活用
シコラーは左右に振られることには慣れていますが、前後の揺さぶりや、高い打点で打たされることを嫌がります。無理にコースを突かず、センターに深く打ち続け、時折テニスボールを高く弾ませるムーンボールを混ぜてみてください。
3. ネットプレーへ誘い出す
多くのシコラーは、後ろで粘るのは得意ですが、前へ出されるとパニックになります。ドロップショットを使い、相手をネット付近へ引きずり出しましょう。そこからロブを上げるか、足元を狙う。彼らの土俵(ベースライン)から引き剥がすのが鉄則です。
4. 8割のスイングを維持する
100%の力で打ち込むと、ミスが増えるだけでなく、返ってきた時の絶望感が大きくなります。常に8割の力で、自分もミスをしない「シコラー返し」の姿勢を見せることで、逆に相手に「こいつは崩れない」というプレッシャーを与えることができます。
5. 相手のバックハンドを徹底的にいじめる
シコラーのフォアは「拾うプロ」ですが、バックハンドは合わせるだけになりがちです。執拗にバック側へ深いボールを集め、甘くなったところを料理する。このシンプルな繰り返しが、最も効果的です。
結論:シコラー対策は「自分との戦い」
シコラーとの試合は、テニスの技術を競う場ではなく、**「どちらが先に理性を失うか」**を競うメンタルゲームです。
相手の「うざい」プレーは、あなたが強いショットを打てている証拠でもあります。焦らず、腐らず、淡々と。次にシコラーと対峙する時は、新しいテニスグリップテープを巻き直し、心機一転、「さあ、どっちが長く返せるか勝負しようじゃないか」と心の中で語りかけてみてください。
その余裕こそが、シコラーを攻略する最強の武器になるはずです。


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