テニスを愛する人にとって「クラッシュ」という言葉は、二つの全く異なる顔を持っています。一つは、ウイルソンが世に送り出した革新的なラケットWilson CLASHシリーズ。そしてもう一つは、試合中の激情に任せてラケットを破壊してしまう、あの「ラケットスマッシュ」という行為です。
どちらもテニスというスポーツの深淵に触れるテーマ。今回は、実際にWilson CLASHをコートで振り抜き、時にはプロ選手のラケット破壊を複雑な心境で見守ってきた筆者が、その実態をリアルな体験ベースで綴ります。
魔法のしなり、Wilson CLASHを使ってみて驚いたこと
初めてWilson CLASHを手にした時、正直なところ「本当にこれで打てるのか?」と疑っていました。カタログスペックを見る限り、カーボンラケットとは思えないほどの「しなり」を強調していたからです。
実際にコートに出て、軽くショートラリーを始めた瞬間に衝撃が走りました。ボールが面に当たった瞬間、ラケット全体がまるで生き物のようにグニャリとたわみ、ボールを包み込むような感覚があったのです。
- 唯一無二の打球感:インパクトの瞬間、ボールがガットに食い込んでいる時間が明らかに長く感じます。かつてのウッドラケットのような柔らかさがありながら、振り抜いた後は現代のラケットらしいパワーでボールを弾き飛ばしてくれる。この「ホールド感」と「反発力」の両立は、他のラケットでは味わえない中毒性があります。
- 「肘に優しい」は本当だった:以前、硬めの黄金スペックラケットを使っていた時期は、冬場になると決まって肘に違和感を覚えていました。しかし、Wilson CLASHに変えてからは、オフセンターで打ってしまった時の嫌な衝撃がマイルドになり、テニス肘の不安から解放されました。
- 面の安定性とパワーの進化:最新のWilson CLASH V2.0やWilson CLASH V3.0(※2026年時点の最新ラインナップ)では、初期モデルにあった「柔らかすぎてコントロールが定まらない」という欠点が克服されています。芯を外しても面がブレず、しっかりとコートの奥にボールを運んでくれる安心感は、中級者以上のプレーヤーにとっても大きな武器になります。
なぜプロはラケットを「クラッシュ」させてしまうのか
一方で、テニスファンを時に熱狂させ、時に失望させるのが、物理的な「ラケット破壊」です。ノバク・ジョコビッチやニック・キリオスといった名手たちが、一瞬の怒りで高価なテニスラケットをコートに叩きつけ、バラバラにする光景。
私自身、真剣勝負の草トーナメントで、自分のあまりの不甲斐なさに、握っているラケットを地面に叩きつけたい衝動に駆られたことが何度もあります。
- 孤独なスポーツゆえの爆発:テニスはコート上で誰の助けも借りられない究極の個人競技です。ミスは100%自分の責任。その重圧とフラストレーションが限界を超えた時、矛先は唯一の相棒であるラケットに向かってしまいます。
- 破壊が生む「リセット」の罠:あるプロ選手は、ラケットを壊すことで溜まった毒素をすべて吐き出し、次のセットから見違えるようなプレーを見せることがあります。しかし、これは一般プレーヤーにはおすすめできません。壊した後に残るのは、自己嫌悪と、折れたテニスラケットを新調するための高額な出費だけだからです。
- ナダルが教える「真の強さ」:ラファエル・ナダルは、生涯で一度もラケットを折ったことがないことで知られています。彼は「ラケットを買えない子供たちが世界中にいる。道具を粗末にするのは自分への甘えだ」という教育を受けて育ったといいます。本当の「クラッシュ」を防ぐのは、自分を律する強い心なのです。
結論:あなたのテニスライフを「クラッシュ」させないために
ウイルソンのWilson CLASHは、プレーヤーの身体を衝撃から守り、テニスの楽しさを再発見させてくれる素晴らしいツールです。もしあなたが、もっとテニスを長く、怪我なく楽しみたいと考えているなら、この柔らかいラケットを選ぶことは正解の一つでしょう。
しかし、心の中にある「クラッシュ(破壊衝動)」には注意が必要です。ミスをラケットのせいにせず、道具を愛でる気持ちを持つ。そうすれば、コート上でのパフォーマンスは自然と向上していきます。
「クラッシュ」というラケットを相棒に、しなやかで力強いテニスライフを送ってみませんか?
次は、Wilson CLASHに最適なストリングのセッティングについてご紹介しましょう。


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